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その女の子が信じてくれたなら、ドロボウは空を飛ぶことだって、湖の水を飲み干すことだってできるのに
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○三国志

点数:8点
寸評:史実の創造の融和が上手い。

たとえ私が天に叛こうとも、天をして私に叛くことはさせない!!

さて、北方謙三さんが書いた三国志。読んだ方も多いと思います。結構売れたみたいですからね。
実際、今まで読んだことのある三国志よりも面白いと思います。

傑作と名高い吉川英ニさんの三国志も面白いです。
が、なるべく翻訳を中心とし、それを自然になるように構成しているので、時代にそぐわない、というか中国的思想の欠点もまた多く含まれていて、鬱陶しいところがあります。
もって回った表現や構成などが。

が、北方さんのは正史を元に完全に自分で作り上げた物語として書いているので、そういったものはありません。
正史が元ではありますが、当然創作の作中人物も数多く存在します。
曹操の間者をしている者。
劉備の間者をしている者。
周瑜の愛人。
そして曹操の頭痛を治療していた医者。この医者は最後の方でかなり重要な人物として描かれています。

北方さんの上手いところは、こういった創作人物を前面に押し出すのではなく、いわば象徴として操っているところです。
志と言うものを持ち、国を立て直そうとする者。
それに対し、道を究めるために医療を志し、人を治そうとする者。
こういう対比が面白いです。

人と人のつながりもまた面白いです。
劉備三兄弟。演戯に書かれているものほど粘着質なものではなく、男のつながりとして書かれています。
また、 曹操の描き方もいいです。演戯だと不必要に悪者として書かれていますが、北方さんのは激しい人物として書かれています。

一つの思想に偏って描かれてしまう傾向のある三国志ですが、北方さんのは基本的に悪党というものを決めて書いていません。トウタクですら、悪党ではないです。
こいつはこんなことを考えて行動していたのだろうとか、そういうことです。
なので、人物が非常に魅力的に映ります。

一番圧巻なのは呂布。それまではただの阿呆、もしくは不義理でどうしようもないケダモノとして描かれることが多かった呂布ですが、北方さんの場合、自分に忠実なだけで、信じることをしただけの人物として描かれています。

考えてみれば、呂布ってのは異民族なわけです。辺境の地、匈奴で育った戦士です。
力がすべて。
体面ばっかりを重んじ、特に意味のない形式を求める文化からそういった人間を見れば、確かに野蛮人にしか見えないかもしれませんけどもね。

三国志って得てしてこういう傾向(偏った思想から物を語る)があるので、読む側もフィルターをかけてやる必要があります。

そういうところを綺麗に均し、個々の人間を描き分けているので、北方さんの三国志は最高傑作のひとつだと思います。
序盤から中盤は凄く面白いです。
が、孫策が死んだ辺りから徐々に寂しくなってきて、周瑜が死んだ辺りで物語が哀しい感じになってきます。
関羽が死んだら熱さがなくなり、曹操が死んだら、もう後は救われない感じです。

これ、小説がつまらないってことじゃなく、史実の中に面白い人物がいなくなってしまったということです。人物が小粒になったと。
そういう意味で、北方さんも描いています。
物語は相変わらず面白いのですが、やはり迫力に欠けます。感情移入できないというか。
だって、最後は孔明一人しかいませんからね。

陸遜?司馬慰?孫権?どれもつまらないです。
孫権は、この小説を読んで嫌いになりましたしね。本当に下らない人物だなあと。
のし上がろうとするのではなく、人の足を引っ張って、相対的に自分が上になろうとする奴です。
自分が頑張るんじゃないんです。頑張っている人の結果を盗むだけなんです。
要は、時間と労力を無視した結果だけを手に入れようとする男です。
つまらん。

現代社会でも、こういう奴って多いです。自分の事を要領のいい賢い人間だと思っているようですが、ただただ下らないだけです。
優れていたのは確かなのかもしれませんが、まったく面白くないです。

人間、優れているか否かなんてことはさして重要ではなく、面白い奴か否か。これが大事ですから。

この三国志。作中人物の視点を交互に変えることにより、話が進んでいきます。
つまり、最初は劉備の視点で描かれる。次は曹操の視点で。孫堅の視点。
人物が増えてくると、関羽、張飛、孫策、孫権、周瑜、呂布、陸遜などなど。その時代の重要な人物の立場から描き、それを入れ替えて進んでいくものです。
書いているほうは大変だったでしょうが、読む側は面白いです。
立場を変えれば見方も変わる。当たり前のことですが、これまでにはない書き方ですね。

全13巻の長編ですが、私はこれをすでに20回以上読んでいます。
完結するまでは続巻が出るごとに1巻から読み直していました。
完結して以降は、毎年新年になるとこれを読むことにしています。

何回読んでも、やっぱり周瑜が死んで以降は哀しい物語に感じてしまうんですよねえ。
つまらない時代になったと言うか、夢がなくなってしまったというか。
形が定まり、無茶が許されない時代が来てしまうと、どうしても面白い人間ってのは減ってしまうんでしょうね。
今の日本のように。
自分で何かするというよりも、他人のしたことを盗むやつばかりというか・・・。

三国志の作法として、孔明の死で幕となります。
秋風五丈原。星が落ち、最後の英雄すらも。
孔明がいなくなり、そして誰もいなくなった・・・

男たちの夢は露と消えたわけです。
が、消えることを分かっていながらも戦う奴がいるからこそ、歴史は紡がれていくのですな。

死ぬ間際の孔明の気持ちを思うや、私は涙が出そうになります。
例え傑出した天才であっても、時代の流れには逆らえないのです。
そのことを孔明ほどの男が知らなかったわけがありません。
が、それでも戦い続け、志半ばで散ったと。

「臣亮申す。先帝功を修むることいまだ半ばならざるに・・・」

13巻。総ページ数で言えば、3000ページ以上にもなる長い本ですが、読んでいて飽きさせません。読みやすいですし。
三国志を読んだ事のある方も、そうでない方はより一層お勧めですよ。
数ある三国志の本の中で、間違いなく最高峰ですから。

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