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その女の子が信じてくれたなら、ドロボウは空を飛ぶことだって、湖の水を飲み干すことだってできるのに
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ローマ人の物語「終わりの始まり」

点数:6点
寸評:同時的に語れなかったのか・・・

prologue as epilogue ということですね。どこかで聞いた事のある言葉です。

今回のローマ人の物語は、まあまあでしたねえ。面白くないと言うわけではないですが、密度というか熱と言うか、そういうものがなかったです。

著者の史観により、「賢帝の世紀」にはアントニウス・ピウスまで。次巻のこれには、ローマ最高の時代と言われたマルクス・アウレリウス・アントニウスからローマ崩壊の兆しの時代と言われるセヴェルスまでを描いています。
つまり、マルクス・アウレリウスの時代が最高潮と言われているが、実は崩壊の予兆は彼の時代からあったのではないか?
そういう考えの下、描かれているわけですね。

先に欠点を書いてしまいましょうかね。
著者。昔からそうなんですが、句読点の使い方が変なんですよ。「、」の入れる場所がね。
変な場所に「、」が入っているので、頭の中でそこで切って読むと「?」になります。

あと分かり辛い語法を使うんですねえ。
「黒いコートを着、シルクハットを被り、気取った物腰の~という名前男は、実は警官だった」
みたいな語り口が多いんですよ。(文章は適当に書いただけ)
主語を思いっきり後にするので、前に並んだ形容詞が頭に入らないんですよね。

だったら、
「その男は~という名の警官で、~という風体だった」
みたいに書けば、凄くわかり易いんですよ。
どうにも、著者は決定的に文才がない気がします。

ただし、所謂「説明のための文章」としては、かなり高水準です。
文学的な表現がほとんどないため、流れが的確に掴めます。
要するに、パラグラフとしては分かりやすく、センテンスは分かり辛い箇所があるということですね。
なんか矛盾してますが。

形としての欠点はそんなところですね。この欠点は著者特有のものなので、彼女の本を読むときは逃れられないわけですけど。

また、同時的なことを書く場合、片方を書き終わってからもう片方を書くという方法が気になります。
これをされると、読者はどうしても同時的に把握できないので、分かり辛いです。

さて、内容は、マルクス・アウレリウスの治世から始まっているわけですが、どうにも資料が少ないせいか、密度感がありません。これはさっきも書きましたけどね。
実際、資料はほとんどないみたいです。
この皇帝は「哲人皇帝」と言われたのに、実際には戦争ばかりをせざるを得ない時代だったようです。
何よりも哲学を愛する男。哲学(認識一般ではなく学問としての)を言葉遊びだと考えている私は、そういう価値観が理解できません。
私はリアルな思考方法、実践論に価値を見出している人間なので、理論のための理論になってしまう哲学には、あまり愛着をもてません。

性善説なんて嘘の皮で、性悪説が正解に近いと、歴史が証明していますからね。
法律そのものが、性悪説から生まれたシステムなわけですから。
中国でいう諸子百家の時代に生まれた法家によってね。
法律のチカラが、秦という国を史上初の中国全土統一まで導いたわけですから。

マルクスの治世のほとんどを費やした戦争。パルティアからゲルマニア戦役まで。
これらの戦争が、どういう流れで行われたのか、ここの戦闘の繋がり。そういうものが、ほぼ資料として残っていないので、語りようもないらしいですが、なんとか頑張っていますね。

マルクスといえば、後漢に使者を送り、アントン(漢字忘れた)という名の皇帝として、後漢書にも残っています。
ま、当時のローマは、それくらいに凄まじい世界だったのです。
まさに、「ローマ世界」といえるでしょう。
地中海全域、西ヨーロッパ全域、東ヨーロッパの一部、アフリカの地中海沿岸地域、小アジアの西側。
これらを統べていた訳ですから、その領土がどれだけ大きいか分かります。

さらに凄まじいのは、この地域には四大文明のうち、2つまでも入っているということです。
つまり、様々な民族、宗教、価値観、風習。そういったものがあきれるくらいに混在する世界を、ローマは内包していたわけです。
それを考えれば、中国の統一国家など霞みます。

ローマは悪の帝国。そう断ずる人も多いですが、ちゃんと歴史を知り、世界観を把握すれば、むしろ現在の世界よりも遥かに優れた自由国家だったと分かる筈です。
人種や宗教などによる偏見や差別はなかったわけですからね。

大体、皇帝自身が、本国イタリアから出た者以外のほうが多いのです。スペインとかそういうところからの出身者がね。

さらに驚くべきは、日本人の価値観ではちょっと理解しがたいのですが、皇帝という存在は「独裁者」「専制君主」ではなく、ただの代表者なのですね。
市民が平気で皇帝に文句を言えるのです。それをちゃんと聞かないと、皇帝は皇帝たる資格がないと断じられるのです。
前巻に書かれているハドリアヌス。町を歩いていたら、ある女に呼び止められ、要望を聞いてくれるように言われます。
が、ハドリアヌスは忙しかったので(皇帝は常に多忙を極めます)、「また後にしてくれ」。そう言ったそうです。
すると、
「市民の要望を聞かないのならば、あなたには皇帝たる資格はない!!」
そう言われ、仕方なくハドリアヌスは引き返し、女の要望を聞いたそうです。

皇帝というと、東洋人の我々はいかめしい権力者を想像してしまいますが、ローマにおける皇帝とは、そういう存在です。
ローマ世界の全権を委ねられる人物ですが、その権力を放棄または自分のために使おうとするや否や、さっさと排除されます。

さらに、ローマでは皇帝の世襲というものが基本的にはありません。勿論、ローマが衰えてきた時代では世襲となっていますが、カエサルからマルクス・アウレリウスまでは世襲ではないのです。
これは、アジア圏に属する我々には、ちょっと分からない価値観ですけどね。血が正当性を証明するってのが、アジアの価値観ですから。

血ではなく、能力や人物としての資格によって、代表者を決定したのが、ローマなわけです。
だからこそ、中国の様に、漢の時代になって以降の進歩がなくなったりすることもないのですね。
血が正当性を証明し、それ以上がなく、しかも皇帝が独裁者という文明は、ある程度以上大きくはなれませんし、寿命も短くなるわけです。
こういう体制は、もって300年です。歴史が証明しています。

さて、マルクスが死んで以降は、悪帝として有名なコモドゥスが皇帝になります。マルクスの息子ですね。
コモドゥスといえば、映画「グラディエーター」で、徹底的に悪役として描かれていますが、あそこに書かれていることのほとんどすべてが「嘘・創作」であることが、読めば分かります。
最後すら、大嘘ですね。
剣闘試合で殺されることに映画ではなっていますが、実際には暗殺されているんですねえ。

そして、コモドゥスが死んで以降は、ローマは腐り始めます。
皇帝が出ては殺され、内乱が起こり、最後に勝ち残ったセヴェルスが皇帝として君臨します。

が、このセヴェルスこそが、オリエント、アジア的皇帝の端緒だったわけです。
つまり、皇帝という存在を独裁者にし、世襲制を取り入れ、ローマ世界のダイナミズムを失わせてしまったという・・・。

だからこそ、prologue as epilogue なわけです。
ローマ的価値観がなくなり始め、ダイナミズムも失われ、固定化した世界へと・・・。
こういう歴史を読んでいると、かならず落日に出会います。
そして、寂しくなるんですよね。
三国志なども、孫策の死で哀しくなり、曹操の死で決定的となり、劉備の死で救いがなくなり、孔明の死で終わりを迎えると。

要約すると、そんなことが書かれているわけですね。
やっぱり、歴史ってものは、最も面白い物語です。

最後に、文庫のタスキに書かれていたのですが、「2007年以降、文庫は毎年一巻づつでます」とありました。
つまり、この本は文庫で完結するまで、あと4年はかかるわけです。完結は2010年になるわけです。

はぁ・・・、なんだってさっさと出してくれないんだよ!!


~追記~

キター!!
クレスト・デルタ四脚。

http://www.amiami.com/shop/?vgForm=ProductInfo&sku=TOY-RBT-0071&template=review.html

大変結構ですな。

メカだ。マジでメカだ。馬鹿馬鹿しい位にやる気でメカだよ、母ちゃん!!
こんなもんが存在していたら、絶対に動かないし、動いてもとろくさいからいい的にしかならない筈だ!!

だが、そこがいい。
いいんだよ!面白ければ!!

キャラクターキットには、そういう開き直りが必要だ。

ホント、これってどういう風に歩くんだろうな?
こんなんだったら、タイヤかキャタピラで良いじゃん!!って突っ込みはご法度だぜ?模型野郎諸君。

うーん。作りたい。
仕方ないことですが、価格帯も現行プラス1000円ということで、4500円ですか。
これだけのボリュームがあれば、私は安いと感じますけどね。

最早、多くを語ることもあるまい。
これは漢のキットだ。
漢ならば、燃えるはずだ!!

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テルスの発送通知が来ました!!
明日の午後には届きそうです。
あ~、待ち遠しい・・・。

「ニーベルンゲンの歌」


点数:7点
寸評:荘厳さと悲壮さがよく描かれている

さて、今回は久しぶりに読書覚書です。
前回っていつだっけ?まあ、いいや。

それだけキットに没頭していた・・・わけでもないんですけどね。セレナさんとかが重たかったってのは本当ですが、それ以上に、最近また映画を見だしていて。
模型を再開してからずっと映画すらも見ていなかった(普通のTV番組はまず見ない)のですが、やっぱり映画って面白えやと。

ん?なんか関係ない話を書いているな。いつものことですが。
まあ、そんな訳で、模型も本も映画もってわけには当然いかないわけで、本が疎かになってました。
疎かといっても、年間で言えば30~50冊くらい読むので(当然、再読も含む)充分すぎるとは思いますが。

なんか、出版関係の仕事をしている人は、月に200冊くらい読むらしいですよ?
ええ~!って気がしますが、実際には嘘で、200冊を熟読するのではなく、流れを追うためだけに会話文だけ読むとか、そんないい加減な読み方らしいです。
まあ、そうでしょうねえ。じゃなきゃ、気が狂いますよ。一日7冊なんて。

で、今回のお題。
「ニーベルンゲンの歌」

超有名ですよね?ご存知、ジーフリト(ジークフリート)とクリエムヒルト(クリームヒルト)が出てきて、ジーフリトは名剣バルムンクを片手に、クリエムヒルトはその美貌を武器に大活躍。
何だかんだでドッカーンって話です。
非常に痛快かつ鮮烈なお話です。

・・・嘘です。全然そんな話ではありません。

ゲーテ曰く。
「これはドイツ文学におけるイーリアスだ」
だそうです。完全に文学ですな。私の苦手な。

成立そのものはイーリアスよりも全然新しく、今から800年ほど前です。
え?超古いじゃんって?そうですね。こういうところが、洋の東西を問わず、大陸の根本的な凄さですね。
文明って物が、島国日本とでは根幹からして違うわけです。
ちなみに、イーリアスは2800年くらい前なんですけどね・・・。
その頃、日本てなにしてたっけ?

さて、ニーベルンゲンの歌です。
これ、前編と後編に分けて考えられるのが一般的なようです。
前編がジーフリトの活躍とクリエムヒルトの愛を勝ち取り、幸せな結婚をし、それがハゲネ(クリエムヒルトの兄=王の忠臣)に奪われ悲嘆にくれるところまで。

後編は、クリエムヒルトの復讐劇ですね。

あくまで昔の文学ですから、かなり修辞が鬱陶しいところがあります。何度も同じことを繰り返したりするのが多いです。
が、それを差し引いても、やはり歴史に残る名作と言ったところでしょう。

前半のジーフリトの冒険譚は、もう少し血湧き肉踊る内容にしてくれると尚良かったのですが、それでは文学性が削がれるからでしょうか?結構、アッサリ終わってしまいます。
しかし、ジーフリトの偉大さと、クリエムヒルトの兄であり王であるグンテルの駄目っぷりが良く描けています。

そして、前半の最後、ハゲネがグンテルをそそのかし、ジーフリト暗殺を目論むところなど、まさに糞野郎の面目躍如です。
金に目が眩んで、自分の恩人を殺す奴ですからね。グンテルは。

後半に入り、クリエムヒルトの凄まじい復讐劇が始まります。
ここが物語りのミソですから、あまり具体的なことは語らないようにしますが、それにしてもクリエムヒルトは徹底的に「女の権化」として描かれています。
甘えたり、泣き落としを狙ったり、感情だけで突き進んだり、果ては自分は外野にいて他人に危険を負わせたり。
う~ん。女です。まさに。

しかし、こういったところがキチンと描けているから名作なわけです。英雄叙事詩として分類されますが、英雄として描かれているのはジーフリトただ一人です。
それ以外の者は、欲と感情にまみれた生身の人間として描かれているのです。
それが人間の本性ですからね。
クリエムヒルトも、そうした描かれ方をしています。前半こそ貞節な淑女ですが、後半に入れば自分に傷を負わせた人間に贖罪をさせるために、どんなことをもする人間と化しています。
鬼女でしょう。これは。

地上で最も愛する男、ジーフリトを暗殺したハゲネを殺すため、ありとあらゆる画策をし、共犯であるグンテルだけならまだしも、まったく関係のない、というかハゲネやグンテルに反発をしクリエムヒルトを気遣ってくれた弟たちまでをも巻き込んだ復讐をするクリエムヒルト。

まさに人間ですね。怒りに駆られると、何にも見えなくなる。自分のすべてを正当化してしまう。
それがハゲネ以下の行いであることも気が付かない。

その復讐のため、一体何人の血が流れたのか。
その怨念が、結局・・・。

そして誰もいなくなった・・・。

アガサ・クリスティの本のタイトルですが、ニーベルンゲンの歌にこそ相応しい一言ですね。

後半は、私はハゲネとその一党(グンテルはいまいち存在感がなかった)に感情移入してました。
こいつら、男だと。やる、と。

クリエムヒルトの復讐は果たされるのか?
結末はどうなるのか?

それは読んだ人だけのお楽しみ。
文学史史上の傑作と言うだけあって、その最期は圧巻でした。アレは予想がつきませんでしたね。

まあ、必ずといっていいほど図書館にあるでしょうから、読んでみることをお勧めします。
突き抜けた面白さではありませんが、ジンワリと何かが来ます。

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○三国志

点数:8点
寸評:史実の創造の融和が上手い。

たとえ私が天に叛こうとも、天をして私に叛くことはさせない!!

さて、北方謙三さんが書いた三国志。読んだ方も多いと思います。結構売れたみたいですからね。
実際、今まで読んだことのある三国志よりも面白いと思います。

傑作と名高い吉川英ニさんの三国志も面白いです。
が、なるべく翻訳を中心とし、それを自然になるように構成しているので、時代にそぐわない、というか中国的思想の欠点もまた多く含まれていて、鬱陶しいところがあります。
もって回った表現や構成などが。

が、北方さんのは正史を元に完全に自分で作り上げた物語として書いているので、そういったものはありません。
正史が元ではありますが、当然創作の作中人物も数多く存在します。
曹操の間者をしている者。
劉備の間者をしている者。
周瑜の愛人。
そして曹操の頭痛を治療していた医者。この医者は最後の方でかなり重要な人物として描かれています。

北方さんの上手いところは、こういった創作人物を前面に押し出すのではなく、いわば象徴として操っているところです。
志と言うものを持ち、国を立て直そうとする者。
それに対し、道を究めるために医療を志し、人を治そうとする者。
こういう対比が面白いです。

人と人のつながりもまた面白いです。
劉備三兄弟。演戯に書かれているものほど粘着質なものではなく、男のつながりとして書かれています。
また、 曹操の描き方もいいです。演戯だと不必要に悪者として書かれていますが、北方さんのは激しい人物として書かれています。

一つの思想に偏って描かれてしまう傾向のある三国志ですが、北方さんのは基本的に悪党というものを決めて書いていません。トウタクですら、悪党ではないです。
こいつはこんなことを考えて行動していたのだろうとか、そういうことです。
なので、人物が非常に魅力的に映ります。

一番圧巻なのは呂布。それまではただの阿呆、もしくは不義理でどうしようもないケダモノとして描かれることが多かった呂布ですが、北方さんの場合、自分に忠実なだけで、信じることをしただけの人物として描かれています。

考えてみれば、呂布ってのは異民族なわけです。辺境の地、匈奴で育った戦士です。
力がすべて。
体面ばっかりを重んじ、特に意味のない形式を求める文化からそういった人間を見れば、確かに野蛮人にしか見えないかもしれませんけどもね。

三国志って得てしてこういう傾向(偏った思想から物を語る)があるので、読む側もフィルターをかけてやる必要があります。

そういうところを綺麗に均し、個々の人間を描き分けているので、北方さんの三国志は最高傑作のひとつだと思います。
序盤から中盤は凄く面白いです。
が、孫策が死んだ辺りから徐々に寂しくなってきて、周瑜が死んだ辺りで物語が哀しい感じになってきます。
関羽が死んだら熱さがなくなり、曹操が死んだら、もう後は救われない感じです。

これ、小説がつまらないってことじゃなく、史実の中に面白い人物がいなくなってしまったということです。人物が小粒になったと。
そういう意味で、北方さんも描いています。
物語は相変わらず面白いのですが、やはり迫力に欠けます。感情移入できないというか。
だって、最後は孔明一人しかいませんからね。

陸遜?司馬慰?孫権?どれもつまらないです。
孫権は、この小説を読んで嫌いになりましたしね。本当に下らない人物だなあと。
のし上がろうとするのではなく、人の足を引っ張って、相対的に自分が上になろうとする奴です。
自分が頑張るんじゃないんです。頑張っている人の結果を盗むだけなんです。
要は、時間と労力を無視した結果だけを手に入れようとする男です。
つまらん。

現代社会でも、こういう奴って多いです。自分の事を要領のいい賢い人間だと思っているようですが、ただただ下らないだけです。
優れていたのは確かなのかもしれませんが、まったく面白くないです。

人間、優れているか否かなんてことはさして重要ではなく、面白い奴か否か。これが大事ですから。

この三国志。作中人物の視点を交互に変えることにより、話が進んでいきます。
つまり、最初は劉備の視点で描かれる。次は曹操の視点で。孫堅の視点。
人物が増えてくると、関羽、張飛、孫策、孫権、周瑜、呂布、陸遜などなど。その時代の重要な人物の立場から描き、それを入れ替えて進んでいくものです。
書いているほうは大変だったでしょうが、読む側は面白いです。
立場を変えれば見方も変わる。当たり前のことですが、これまでにはない書き方ですね。

全13巻の長編ですが、私はこれをすでに20回以上読んでいます。
完結するまでは続巻が出るごとに1巻から読み直していました。
完結して以降は、毎年新年になるとこれを読むことにしています。

何回読んでも、やっぱり周瑜が死んで以降は哀しい物語に感じてしまうんですよねえ。
つまらない時代になったと言うか、夢がなくなってしまったというか。
形が定まり、無茶が許されない時代が来てしまうと、どうしても面白い人間ってのは減ってしまうんでしょうね。
今の日本のように。
自分で何かするというよりも、他人のしたことを盗むやつばかりというか・・・。

三国志の作法として、孔明の死で幕となります。
秋風五丈原。星が落ち、最後の英雄すらも。
孔明がいなくなり、そして誰もいなくなった・・・

男たちの夢は露と消えたわけです。
が、消えることを分かっていながらも戦う奴がいるからこそ、歴史は紡がれていくのですな。

死ぬ間際の孔明の気持ちを思うや、私は涙が出そうになります。
例え傑出した天才であっても、時代の流れには逆らえないのです。
そのことを孔明ほどの男が知らなかったわけがありません。
が、それでも戦い続け、志半ばで散ったと。

「臣亮申す。先帝功を修むることいまだ半ばならざるに・・・」

13巻。総ページ数で言えば、3000ページ以上にもなる長い本ですが、読んでいて飽きさせません。読みやすいですし。
三国志を読んだ事のある方も、そうでない方はより一層お勧めですよ。
数ある三国志の本の中で、間違いなく最高峰ですから。

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「カリオストロ伯爵夫人」

点数:7点
寸評:いまいち釈然としない箇所もあるが、全体的に凄く面白い。

カリオストロとくれば、我が日本国なら「ルパン三世 カリオストロの城」ですね。
これの題材となった物語が、このカリオストロ伯爵夫人です。
勿論、モーリス・ルブランが書いたアルセーヌ・ルパン物語の中の一つです。

これが書かれたのは、ルパンの中でも終盤、というか実質最後の発表作となるのかな?よく分かりませんけども。
ま、そんな感じの時期にかかれたものですね。
が、物語はルパンが若い頃という設定で書かれています。
そう。ルパンがまだ二十歳そこそこの頃ですよ。

最初のルパン夫人(!)が登場するという、ルパン研究家には欠かせない物語です。
何を隠そう、この最初のルパン夫人こそがクラリス・デティグ。つまり、ルパン三世・カリオストロの城に出てくる芳しい乙女の原点なわけですね。
ルパン三世が好きな人は、是非とも読んでみては如何でしょうか?そのあまりの違いに愕然としつつも、楽しめますよ。

で、この本、私は既に3回くらい読んでいました。今回、4度目を読了ということでレビューでもしてみっかと。

やはりルブラン。毎度のことですが、無駄に場面を盛り上げようとするところは同じです。
修辞は多いのですが、実際にはそれほどたいしたトリックは使っていないところが、ルパンのミソです。
「真実を知れば、たったそれだけのことかと誰しもが言うでしょう。が、たったそれだけのことを思いつくか否かが、偉大さと凡庸さの違いなのです」
そんなことをどっかでルパンは言っていましたが。

ルパンといえば、ミステリと誰しもが思うでしょうが、ホームズ物なんかを読んでしまうと、ルパンはミステリというよりも冒険譚といった方が相応しいなと思います。
実際、この物語も冒険譚です。
フランスに伝わる秘宝を巡り、3つの勢力が凌ぎを削るという。

物語には2人の女性が登場します。
一人がクラリス。もう一人がジョセフィーヌ・バルサモです。ジョセフィーヌはかの有名な詐欺師、山師、錬金術師だった(要するに如何にも中世的な細木カズコですが)、
ジョゼッペ・バルサモの娘という設定で登場します。
この辺は、中世ヨーロッパの歴史を齧っていないと、その謎めかしさや面白さが分かり辛いかもしれません。
まあ、調べてみるといいと思います。いまや、この手のオカルト関連はネットで幾らでも調査できますから。サンジェルマンとかも面白いですよ。

まあ、それは置いといてと。
この二人の女性の間で、ルパンは揺れ動くわけです。この辺の感性はいかにもフランス人という感じで、日本人の私には理解できないんですけどね。
恋愛を至上とする民族ですから、フランス人はね。ま、フランス人にノーマルとアブノーマルの差はないなんてことも聞きますけど、どうなんでしょう?普通にサンピーをするみたいですし。

そうして見えてきたものは、ジョセフィーヌはどうやら犯罪者だったということ。
それは、ルパンも許しがたい、殺人や脅迫をもしている悪人であったこと。
唾棄すべき犯罪者であると同時に、男を虜にするジョセフィーヌ。
クラリスとジョセフィーヌ。どちらを愛すべきか?苦しむルパン。

ルパン、ジョセフィーヌ、もう一つの団体。秘宝を巡り、3つ巴の戦いが始まる。
誰が勝つのか?
秘宝の秘密とは何か?
ルパンとクラリス、ジョセフィーヌの三角関係の行方は?
結末は如何に?

それは読んだ人だけのお楽しみ。

ちなみに、この物語には続編があります。
「カリオストロの復讐」という小説ですが、これはたいしたものではないです。これの荒筋を書くと、どうしても「カリオストロ伯爵夫人」の結末に触れざるを得ないので、止めておきます。
まあ、伯爵夫人を読めば、大体の内容は判るはずです。何が復讐なのかはね。


ルブラン。本当は文学を書きたかったのです。最初に書いた作品も純文学でした。
それの評価も高く、先輩であり師でもあったモーパッサンと並び評されたくらいでした。
「これがモーパッサンなら、最高のモーパッサンだ」とね。

が、たまたま小遣い稼ぎのために書いたルパンが凄く好評で、読者と編集者の要望で続きを書くことになりました。
その結果は知っての通り。ルブランといえばルパンということで、純文学を書かせてもらえなくなったのでした。
本人もこれには悩んだようで、ルパンが売れれば売れるほど、孤独を抱えるようになったそうです。

理想と現実の狭間の葛藤ゆえでしょうか?この小説には純文学的な恋愛が多く含まれています。ルパン、クラリス、ジョセフィーヌの三角関係ですな。
これが良かったのかどうかは人によるでしょう。

この辺の作者の意思とは別にってところ、ホームズの生みの親であるコナン・ドイルも同じですね。
歴史作家を自認し公言もしていたにもかかわらず、ホームズばかり書かざるを得なかったと。

こんど、ドイルの「白面の騎士」って本を読んでみたいのです。図書館においてあったのでね。本屋にないんですよ。

才能ってのは本人の考えとは違うってことでしょうかね?
あるだけマシってのもいえますが。

って、ルパンから随分とずれたな。

ま、読んでみては?面白いことは請合いますよ。

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「蝉しぐれ」

点数:8点
寸評:人を思う心とはかくあるべし!

さて、藤沢周平の傑作の登場です。
数年前に映画化され、知名度はかなり高い作品ではないかと思います。
が、あらかじめ言っておきます。

「小説と映画は別物」

なんでもそうですが、小説を映画化した場合、そのクオリティは相当に下がると思った方がいいです。
ハリーポッターは知りませんけど(読んだことがない)、私が知る範囲では、小説よりもよかった映画など存在しません。

考えてみれば、「たそがれ清兵衛」なんて、かなり無茶な映画化でしたから。
いや、あれもアレで良かったですよ?が、小説版とはまったく違う内容ですよ。
同タイトルの短編小説からいいトコ取りをして、纏めたものが映画バージョンですからね。

さて、蝉しぐれですが、これは紛れもない傑作です。
私、この本を初読したとき、徹夜しました。久しぶりでした。読書で徹夜したのは。
最近、数巻続く本を読むことが多かったので、徹夜してまで読むことがなかったのですな。
ローマ人の物語は本当に面白い歴史叙述ですが、なにせ23巻(当時の文庫版が)もあったわけです。
なので、徹夜してまで一気読みなんて考えもしません。
無駄な抵抗ですからね。

が、蝉しぐれはやってしまいました。
400ページちょっとの内容ですから、徹夜すればいける範囲ですよ。一気にもっさりと読みきりました。

内容はというと、ある少年と少女を描くところから始めるわけです。
彼らがどんな関係で、どんな世界に住んでいるのか。これを丁寧に、しかししつこくならない程度に描いていくんですな。
この辺、さすがに往年の小説家です。上手いもんですよ。

少年と少女の心温まる触れ合い(恋愛ではなく)があり、そこはかとなく漂う慕情がそこに感じられます。

が、やがて少年に悲劇が襲いかかります。
少女は、少年の悲劇を救えないまでも、少しでも共に分かち合おうと、行動で示すわけです。

後、少年は悲劇に押しつぶされそうになりながらも、懸命に自己を維持するため、剣道に打ち込みます。
が、やがて少女との別れが来ます。

少女が別れの挨拶に来た時、少年は道場でシゴキにあっていました。
結局二人は会えず、心にしこりを持ったまま、少年は歳月を跨いでいくのです。

その後、心の一滴を壊してしまう事態が持ち上がります。
少女がなんと・・・。
少年はそこから、心の乾きを背負っていくことになります。
あの時、少女がお別れを言いに来た時、俺が会えていたなら・・・。

月日が過ぎ、少年は青年となり、大人の世界に踏み出します。
そこへ、大人の女性となった少女が絡んできます。
数年ぶりに再開する二人。
少女を襲っためまぐるしい運命。それでも少女を守るため、全身全霊を尽くす少年。

それから20年後・・・。もはや中年となった二人。
その二人の最後の邂逅が待っていた・・・。

「~そのような道はなかったのでしょうか?」
「それができなかったこと。それがし、人生最大の悔いとしております」

なんのことか分からないでしょうし、これを見てもありがちだね!なんていったらいけません。
この本は優れた小説です。ここまで読んで「読まなくてもいいかな」って思ったなら、それは私が悪いのです。
ここまで丁寧に人の心を書いた小説は読んだことがありません。
最後の二人の会話。あれを読んだ時、人ってこういうものだよなあって思いました。

ほんのちょっと歯車がずれただけで、報われない思いってのがあるわけです。
でも、その思いは、その人が生き続ける限り、ずっと心の中で血を流し続けるものです。
その思いが救われたような、ね。

これを読んで感動できるのは、おそらく男だけです。
女性はもっと分かり易く、明確な答えを求めるでしょう。

男性諸君。一度読んでみては如何だろうか?
心を焦がした事のある人なら、きっと知らずに涙が出てくるはずであ~る。

いじょ。
また。

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