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点数:9点。欠点がまったく見当たらない。
寸評:文章力とはこういうことかと教えてくれる。必要最低限かつ充分な文章で綴るミステリは圧巻。
久しぶりに読書覚書です。
ホームズ物。私は大好きです。
このシリーズと出会ったのは、私が小学生5年生くらいのことだったと思います。
学校の図書室に置いてたんですね。ハードカバーで。
で、そこで「シャーロック・ホームの冒険」を読んだんですよ。
初めてホームズに触れた時の感想は、「なんかつまらないな。ルパンの方が楽しいや」でした。
不遜ですね、非常に。
この頃の私の愛読書といったら、ジュール・ベルヌの15少年漂流記や神秘の島。海底2万海里。
さらには数年前に糞みたいなアレンジで映画化されたアーサー王と円卓の騎士だったわけです。
そして、西遊記。
随分と古風ですね。
つまり、かなりハチャメチャな物が好きだったわけですよね。
ま、ガキですから。
といっても、上の本は今で好きです。なんども読み返していますね。
上に挙げた本。ホームズもそうですが、子供の読むものとして、日本では考えられていることが多いです。
が、そう思っている人は、本当の本読みではなく、また熟読もした事のない人たちでしょう。
良質な物語というものは、不思議なことですが、大人向けに書かれた物なのに、いつの間にか子供が大人から奪ってしまい、子供の愛読書になってしまう傾向があるのです。
上の本の中で、純粋に子供向けに書かれた本は、「15少年漂流記」だけです。
他はみんな大人のために書かれた物語です。
本質として面白いものを見つけるのは、いつだって子供というわけです。
大人って、小難しい物を良質だとか高尚だとか思っているものですからね。
「私の友人ワトスン君は、その思考に限界はあるけれども、極めて執拗である」
さて、シャーロック・ホームズです。
沢山の本を読み、経験から頭が合理的になってきて初めて分かってくる面白さだと思います。
コナン・ドイルほど秀逸にして無駄のない綺麗な文章を書く人を、私は知りません。
本当に文章が上手いです。
推理物というと長編が多いものですが、ホームズ物はほとんどが短編です。
長編といっても、200ページ程度のペラペラなもので、しかも大体が2部構成になっており、1部とエピローグだけで事件を解決しているんですね。2部は事件の発端となったことを物語っているのです。
この辺、自称「歴史作家」のドイル面目躍如です。
そんな少ない情報量の中で、事件のあらましから背景、さらには推理から解決までを書いているのです。
如何に無駄がないか。如何にプロットが上手いか。如何に展開が上手いかがわかります。
ホームズ物は短編が主体ってのがあって、ここでは一個一個をレビューしていきません。
やり始めたら60個くらいの文章を書かなければなりませんからね。
私の文章を読む方より、本編を読んだ方が早いですから。
読んだ事のない人に、というか、文章に親しんでいない人に、ドイルの秀逸な文章力を伝えるのは困難です。
なので、一度読んでください。
一番上に書いた「消去法の結果が、不合理に見えても真実である」ってやつは最近出たゲーム、「逆転裁判」ってやつでも使われたセリフでしたね。
シナリオを書いた人の根底にあるミステリってのは、おそらくホームズなんだと思います。
「先の見通しがたたず、事態の展開にいちいち驚嘆するような者は、私のような人間にとって非常にありがたいのである」
私は先読みができることをある意味、矜持としております。
大抵の内容の物は、特に映画などですが、先が読めてしまうのです。前フリなどが特になくてもです。
材料からどんな料理を作るのか分かるように。
が、ホームズの物語は、そのほとんどが読めませんでした。
それも、やはりプロットの上手さにあるのでしょう。
ドイルの長所として、子供の頃は短所に思えていましたが、無駄に盛り上げようとせずに、淡々と語っていくところにあります。
小説というより、叙述に近いのです。
なので、よくできた落語と同じで、話をちゃんと聞いて理解していないと、オチが分からないってことにもなりますね。
これが大人になってしまった私には心地いいのです。
「うまいな~」とね。
「アイリーン・アドラーという名前ではなく、ホームズはただ”あの女(ひと)”とだけ呼ぶのである」
上手いのはそれだけではありません。
まずは物語の始め方。導入部分ですね。これが秀逸です。
関係なさそうなところから上手に発端を持ってくるわけです。
さらに終わりも上手いのですよ。
「私自身、それほど大層な人間だとも思っていないが、お前が思うほど狭量ではないつもりだよ」
ちょっと前に私が読んでいる本の話になったとき60歳ほどのいオジサンにホームズを見せたら、眉根をひそめておりました。
きっと、子供の読むような本だと思い、蔑んだのでしょう。
可哀相になりました。
本当の面白味ではなく、形として、ポーズとして本を読むその姿勢に。
ホームズ物を読んだことも勿論ないのでしょう。
自分が知らない世界を、勝手に否定するのは大嫌いな私です。
好きになる必要はないが、否定したいなら、まずはちゃんと調べてからにしてくれと思います。
で、そのオジサンが私に見せてくれた今読んでいる本。それが・・・
「世界三大宗教の雑学」
こっちの方がどうしようもない気がしてしまいました。
雑学を蓄えるために雑学本を読む。これってオナニーではないかと。
私、こういう雑学本を読んだ試しがありません。面白くないからです。
が、雑学の量で負けたこともほとんどありません。ってか、実際には記憶にありません。私以上の人は確実にいるのでしょうが、体感として記憶に残ってないのです。
雑学本を読まないでも、様々な本を乱読し、色々なことに興味を持ち主体的に調べることで、いつの間にか雑学なんて身についているものです。
本は面白いから読むものです。誰かに読書していることを評価してもらったり、雑学の多さを褒めてもらうためにするものではありません。
この間、電車の中で椅子に座り、ホームズ本を取り出して読もうとしたのです。そしたら、私の前に立っていた人も本を読んでおりました。
ふとタイトルを見ると、そこにはシャーロック・ホームズと書かれていました。
なんとなく感動してしまいました。
同じ車両に乗った人間が、偶然にも時を同じくしてホームズを読んでいる。
ホームズ生誕からはや百数十年。イギリスからはるか離れた極東でも、こうしたことがいまだに起こるのです。
私も一年に一遍くらい全部取り出しては、読み返しております。
既に6回くらい読んでいるのですが、未だ飽きませんね。
この間も、緋色の研究から最後の挨拶まで、全部読んでしまいました。
延原謙さんの訳も、本当に秀逸ですから。これほど日本語として違和感のない訳は初めてでした。
変に硬い言葉遣いになったり、型にはまった語法で訳したりする人は多いですから。いくらプロとは言ってもね。
時代を超える作品とは、やはりちゃんとした理由があるのですねぇ。
「相変わらずだねえ、ワトスン君。時代は移り、人は入れ替わっても、君だけは変わらない」
点数:8点。悪いところもあるが、補って余りある痛快さ。
寸評:途中で、ルパンとルノルマンの関係が読めてしまった私は、哀しいミステリ読者だ。
813。ご存知でしょうか?知っている人ならピンとくる数字です。
ハチイチサンと読みます。
これ、アルセーヌ・ルパンの小説のひとつです。傑作といっていいでしょう。個人的には前回紹介した奇岩城の方が好きなんですけどね。
形式としては、813と続813の二編に分かれていて、繋がってはいますが、前編というべき813も一応の完結をしているところが特徴でしょうか。
ルパンシリーズのいいところとして、次々のお話が展開していくことですね。読んでいるものを飽きさせない。
会話も巧妙で、センスがあります。
が、同時に欠点として、細かいところがちゃんと説明されていないところがあります。
推理物ですから、このへんは謎解きして欲しかったんですけどね。
事件が起こって、その当時は神秘的な様相を呈していたのが、あとになってそれは偶然の要素が働いてそう見えただけとか。
こういうオチはちょっとと思ってしまいます。
あと、無駄が多いんですよね。著者、モーリス・ルブランが勢いで書いたのかな?ってところがかなりあります。
あまり推敲をしない人だったのでしょうか?
ま、これらの欠点を差し引いても、やはり面白いです。既に4回も読んでいますが、まだ飽きませんしね。
上に上げた要素。ホームズ物と真反対ですね。
コナン・ドイルは徹底的に推敲し、無駄を省いた絶妙のストーリーテリングでお話を進めていきます。変に盛り上げようともせず、淡々と。
曖昧なところなどありませんし。
なので、再読しても、いい加減に読み飛ばす箇所ってのがないんですな。
ルパンはとりあえず盛り上げとけ!みたいなところがあるので、結構飛ばすところがあります。
フランス人とイギリス人の違いでしょうか?
どっちがいいのか?
私はどっちも好きですね。
強いて言えば、少年時代はルパン。今ではホームズでしょうか。
いずれにせよ、時代を超えて愛されるミステリってのは数少ないわけです。
その中でもトップのこの二つが相反する内容だってのは面白いですな。
荒筋。
ある金持ちが殺された。謎の数字「813」と書かれたメモを残して。
その背後に影にちらつくルパンの影。ルパンが初めての殺人を犯したのか?
ルパンは、決して人殺しをしない。他に犯人がいるはずだと信じる名刑事ルノルマンは、捜査を開始する。
ルパンもこの刑事の方針に感謝するが、同時にライバルとして刑事と衝突することとなる。
そして、ルパンを陥れようとする謎の殺人鬼。
果たして813とは何を表すのか?
殺人犯の目的は?
そして、その正体とは?
ルパンは何を目論んでいるのか?
結末は如何に?
それは、読んだ人だけのお楽しみ。
最近、タミヤが出しているスケールモデル。
1/32 エアークラフトシリーズ ロッキードマーチン F-16CJ 『ブロック50』 ファイティングファルコン
って奴が気になって仕方ない私です。
しかし、長い名前ですね。要するに、F16・ファルコンです。
F16って、戦闘機の中で一番好きなんですよ。その流線型が。横から見たのと上から見たのでは、全然印象が違う、不思議な機体ですね。
で、お値段ですが、なななんと定価13000円くらい!!
なんだってこんなに高いんだと調べてみると・・・・でかいみたいです。
1/32なんですが、元のサイズがよく分からないので調べてみました。
本物のサイズは全長15.03m。全幅9.5mだそうです。
1/32サイズですと、長さ47cm、幅30cmくらいになります。
これは、お値段以上に破壊力満点です。置くところがねえな。
ってなわけで諦めた次第でした。
閑話休題。
点数:9点。文句なし
寸評:アルセーヌ・ルパンシリーズの最高傑作。
奇岩城(奇巌城とも書く)。ご存知ですか?
アルセーヌ・ルパンシリーズの最高峰ですよ。
最高峰といっても、実はこの本、ルパンシリーズの初期のものなのです。4冊目だったかな?
ルパンシリーズは全部で26冊(?)だったと思うのですが、残念ながら、全部は読んでいません。
全部を訳出してシリーズ化している出版社って少ないんですよ。
この本に出会ったのは、私が江戸川乱歩を卒業し始めた時、小学校5年生くらいだったと思います。
それから幾星霜。何度も読み返しましたが、今でもたまに取り出して読んでます。飽きません。
出版社はマイナーでして(失礼!)名前を覚えていないのですが、この出版社のみが、全種訳出している(私が知る範囲では)貴重なものです。
訳もスマートで、上手。挿絵もあるのですが、鉛筆でササっと書いたハイセンスなデッサンみたいで素敵でした。
まだこのシリーズはあるんでしょうかね?あったら集めたいところですが、その後本屋で見かけたことがないので、おそらく絶版でしょう。アマゾンで調べても見つからないし。
やっぱり絶版かな。
内容は、ルパン対イジドール・ボートルレというお話です。
この本、詠めば読むほど、主人公はイジドール少年なのではないかと思います。
ある晩、いつもの様に、盗みを働いたルパン一味。
翌日、その現場に、興味本位から記者に変装し潜り込んだイジドール少年。
ちょっとした偶然から捜査に協力することになり、次々とルパンのトリックを見破っていきます。
そこから二人の対決は始まっていきます。
今回、脇役になっているルパンですが、この本が一番ルパンの性格(架空の人物ですが)を上手に描写しているかな。
峻厳かと思えば優しさを見せ、冷徹かと思えば激情に身を焦がす。
切れる男は、いつだって複雑なのです。
この本に出てくる奇岩城ですが、エギーユ・クルーズといって、実際にある岩です。
フランスはノルマンディー地方。エトルタの観光名所となっています。
奇岩城。見るからに変な岩です。
海岸にある大きな岩なのですが、形がなんと三角錐。しかも、回りの沢山の岩たちもおかしな形をしていて、異様な雰囲気を醸し出しています。
初めて見た人ならこれを天然物とは思わず、人口のものだと思うことでしょう。
エギーユ・クルーズの謎。それはフランス王家に古くから伝わる伝説。秘宝とも言うべきものでした。
マリー・アントワネットはその秘密を知らされた数少ない人ですが、翌日断頭台に上がったため、その秘宝が使われることはありませんでした。
マリーの旦那、ルイ14世がバスティーユ監獄に閉じ込めたこれまた伝説的な人物、鉄仮面。
彼がマリーが死んだのち、唯一秘密を知る人物でしたが、だれにもこれを明かさず死にました。
こうして、フランス王家の秘宝は闇の中へと消えて言ったのです。
だが、ルパンだけがその謎を解いた!!その力を蘇らせたのだ。
秘宝の力を駆使し、超人的な活躍を見せ、世界を操ったのだ。
そして今、少年イジドールがその秘宝の核心に挑む。
果たして秘宝の謎とは?
二人の対決の行方は?
それは読んだ人だけのお楽しみ。
早く、はやく文庫化してくれ。でないと俺は一人でも暴動を起こすぞ。
まとめて文庫化して~。
点数:7点
寸評:ちょっと繰り返しの説明ががくどいかな。
期間:12/1~12/16。遅い?だって、クロボンがさあ・・・。
半年ほど前、ある友人にローマ人の物語のことを話していました。
「俺は10年、文庫化を待った。そして、全巻が文庫化されるのは、はやくてもあと4年くらいかかるだろう。それまで、たとえ図書館で出会おうと、本屋に山積みになっていようと、俺は読まずに待つつもりだ。全巻文庫化まで、絶対に我慢してみせる」
こういったら、
「妥協も必要だよ?」
といわれてしまいました。
その友人、なんというか深い人間でして、そんな性格から推して、本のことではなく色んな部分、特に私の性格について言われたような気がして、いや、感じすぎかもしれませんが、ともかく、その後1ヶ月間、この言葉が私を悩ませました。
「俺って、そんなにエゴイストかな?」ってな感じで。
言った本人も、そこまで考えてないかもしれないし、忘れているかも知れませんけど、こういう変な性格がある私です。
ひたすら自分の中でウダウダと考えて、自己嫌悪の世界に落ちて行き、そろそろ死にたいな・・・みたいなね。ええ、阿呆です。
ま、いいです。
で、「すべての道はローマに通ず」です。
ローマ人~の中では、第10集目にあたります。集という言葉を使っておりますが、文庫本で読んでいる私の感覚でして、ハードカバーでの10巻目のことです。
文庫だとハードカバーを2~4冊に分けているので、巻と呼ぶのは変な気がするんですね。
なので、集といっております。
この集では、ローマにおけるインフラストラクチャーに特化して書いてあります。
ローマにおけるインフラとは何か?
代表的な例で挙げると、ローマ街道ですね。これは特にお勉強したことがなくても、一般常識の範囲で知っていると思います。
整然として、しかも細部まで作りこまれた石畳の街道です。その精巧さ、耐久性、利便性、巨大さ、長さは中国にまで轟き、秦の始皇帝もこれを真似して道路普請に熱をあげた理由となったのではないかと言われたり言われなかったり。
始皇帝は、この道路工事にアホみたいに人民をこき使い、結果人心が離れ、自分が死んだあとに暴動がおき、史上初めて中国全土を統一するという偉業を成し遂げた帝国は、たったの20年で幕となったのでした。
手にしたムチで地面を引っ叩き、陳勝曰く、
「王侯相いずくんぞ種あらんや!!」
街道の他は、まず上下水道です。これも有名ですね。
巨大な高架を石から造り、そこに水を流したわけです。カリオストロにでてくるような、あんな感じの高架水道ですよ。
といっても、インパクトの強い高架の部分は実際は少なく、ほとんどが地下のトンネルだったわけですが。
それでも、この長大なトンネルと高架を山ほど造り、あらゆる都市に水道を整備し、首都ローマに至っては10本くらいの水道があったようです。
街道と水道。両方とも、キリスト教徒の略奪に会いながらも、2000年ちかい歳月を風雨に晒されながらも生き残り、今日では遺跡となっております。
これだけで、いかに緻密に造られた建造物だったかがわかりますね?
ガンプラなんぞ外に放置しておけば、もって2年です。ローマのインフラはガンプラの1000倍の性能を持っているわけです。いや、そういうものかどうかは知りませんが。
この本、これらの遺跡の写真が沢山載っていて、それを見るだけで楽しいです。
街道を歩く旅人、2000年前の少年と父親の図を想像してみてください。
その他、医療、教育などに関するインフラも、この本では書かれています。
これらはどのような形で行われたのか。
ここら辺は非常に興味深いです。
これだけのインフラを整備するにはどれだけの金がかかったのか?
財源はどこにあったのか?
利用するのには、どれだけの費用を個人が負担しなければならなかったのか?
これほどの巨大かつ精巧な建造物を大量に作って、採算は取れたのか?
どれほどの年月をかけたのか?
などなど、現代に生きる私たちには当然の様に浮かんでくる下世話な思考ですが、教えてあげません。
興味のある人は読んでみては?
内容的にとてもいいです。
相変わらず、一読しただけで分からせてくれる構成力は脱帽です。
読みやすく、平明な語彙は好感が持てます。学者さんが大好きな、無駄に入り組んだ修辞や、まず使わない言葉を多用する姿勢は好きになれないので。
分からせることが、文章の第一命題です。正確を期するために、言葉が非日常的な語彙になるのなら仕方ありませんが、学者さんはそうではないですから。
インフラという題材を扱う以上、歴史の叙述のように順番に書くことはできません。それをこうまで分かり易く纏めたのは偉いです。
が、ちょっとくどいです。説明が。これはさっきも読んだよ、っていうのが結構出てきます。
これまでの集でもあったのですが、今回はさらに多いかな?
平気で時代が前後したりする題材ですから、著者も読者に分かってもらうためにわざわざこうしたのでしょうが、ちょっとね。
前書が今回は長くて、以下のようなことを書いてあります。
「時代が前後したり、ガリアを語ったかと思えばエジプトに飛ぶということは日常茶飯事である。読者もすべての時代、すべての地域を頭にいれて、この巻を読んで欲しい」
とか。ごめんなさい、塩野さん。ハッキリ言っちゃいます。
言い訳がましいです。
文章がちゃんとしていれば、読者は勝手に読み解くものですし、面白ければ分からなかった箇所は再読するものです。
予防線は必要ないのでは?
そんな訳で、上の下という評価で7点です。
読む前は、今回はあまり面白くないかと思っていたのですが、なんのなんの。
かなり面白いですよ。
点数:7点
寸評:塩野さん。悪い癖が出てきてますよ。注意。
ハードカバーは、12月15日に出る15巻をもって、完結ですな。
長かったねえ。15年の歳月は。最後までいってよかった。
著者も結構いいお年ですから、未完なんかに終わったら、俺泣くよ。
隆慶一郎でも泣いた。吉川英二でも泣いた。
ついに完結することですし、文庫版の発行速度もバリ5に上がって欲しいですね。毎月1集刊行ではなく、毎日くらいで。
そうすりゃ、2ヵ月後には、俺もカタルシスを得られる。
ってか、ふと思ったんですが、15年前って、大体俺が第一次ガンプラ時代を卒業した時期じゃねえ?
うお!!こんなところにも繋がりが・・・・ねえか。勝手な思い込みですな。
一般的に5賢帝というが、この本では最初の賢帝ネルヴァは前の巻の最後に納められていて、この集はトライアヌスから始まっています。
文庫では上・中・下の3冊に分けられています。
1冊目がトライアヌス。
2冊目から3冊目半ばまでがハドリアヌス。
3冊目後半がアントニウス・ピウスという構成です。
東洋では一番知名度が高い賢帝であるはず(?)の哲人皇帝、マルクス・アウレリウスは入ってません。
著者独特の史観でこうなったそうです。
ま、一般的な学説なんぞに捉われる必要などまったくないので、自分勝手な分類は大賛成です。
学問としての歴史なぞ、所詮は想像と推測の積み重ねでしかないですからね。
で、内容ですが、ローマの最盛期といわれる時代を書いています。
綺麗にまとめられていて、非常に読みやすく面白いです。
こいつらは一体何をしたのか?それが一読するだけでスッキリ分からせてくれるわけですから、たいした構成力です。
また、それぞれ必要と思われる箇所には図が入っていて、より理解し易くなっています。
が、ちょっと著者の悪い癖が出始めていますね。思い入れとか思い込みとか感傷とか(とても女性的な価値観でのってこと。ま、女性なんですけど。著者)、そういったものが多々みられます。
この人、これが多くて他の作品は好きになれなかったんですよ。
ま、この辺は自分なりに排除するなりしていけばいいんですけどね。
さらに、視点を皇帝に当てすぎかな?
まあ、まったく知らないで言ってるんですが、例えばずっと前の集、「勝者の混迷」とかの場合、色んな人のいろんな立場を書いていたので非常に面白いんですよ。
が、この集は皇帝の視点のみなので、いまいち広がりに欠ける。実際にこの時代は、グラックス兄弟みたいに面白い元老院階級の人間がいなかったのかもしれませんし、いても書くと無駄にページが増えるだけだったのかもしれません。
ちょとしたエピソードなら、他の人の視点も書いてますけどね。
歴史って、権力者の視点から見るより、それより一段、あるいはずっとしたの庶民とかの視点から見た方が面白かったりするんですよ。
例えば戦国時代です。
司馬遼太郎を始めとする、つまらない作家はみんな、大名の視点からしか歴史を書かないんです。それも、糞つまらない情報小説という書き方で。
が、隆慶一郎は、それを覆した書き方をしてくれたんですよね。道々の者とか、そういう視点から歴史を再構築して、さらに情報ではなく、主人公の行動を主体に書いてくれたんです。
だから、破格に面白かったわけです。
そういう意味で、もう少し別の視点からも書いてくれると面白かったんじゃないかと思います。
が、これはローマの歴史の叙述なので、これを要求するのは見当違いですね。
面白さや深みという点では、これ以前の集の方が勝っていると思います。
大量にある情報を徹底的に推敲して書いている感じで、密度が濃かった。
しかし、この集は少しばかり情報は少ないのか、ちょっと無理している箇所がありますね。
でも、充分面白いです。
相変わらず、この集から読んでもサックリ理解できるので、とてもお勧めです。
なぜ、ローマ人だけが1000年の繁栄を謳歌することができたのか?
著者の命題は常にそこにあるわけです。最初から最後まで、これを意識して書いているのです。
中国の歴史書、十八史略とか読めば分かりますが、大体一つの体制の寿命って300年が限界なんですね。
日本でも、鎌倉、室町、江戸幕府。全部300年ほどですよね。
しかし、ローマは1000年もった。
なぜか?
どんなに長い文章を書いていても、常に命題から逸れずに書けるってのは凄いことですね。
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