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期間:11/1~11/11
点数:6点
寸評:入門書にはならない。分かる人だけ分かればいいってことかね?
塩野七生の「ローマ人~」に影響され、いろいろと当時の地中海の歴史物を漁りはじめて早半年。
ふと本屋で見つけた本のタイトルは、そのものズバリ「ハンニバル」。
当然、手にとって中を確認するのは、漢の務めです。
出版社は講談社学術文庫。古事記と同じですな。偶然です。
見出しを見てみると、どうやら学者の先生が書いたもののようです。学者の本って苦手なんですよねえ。
文章が持って回った修辞とか、ウダウダと学説をこねくり回していることが多いので。まあ、ちゃんと歴史を学ぶには、学説ってのは避けて通れないわけですが。
試しに買いました。
読後の感想は、学者が書いたものにしては読み易いが(ウダウダと五月蝿くない)、この人の文章の書き方(内容ではなく、文章そのもの)が分かりづらい部分があるんですね。慣れれば問題ないんですが。
さらに厄介なのは、読者は既にハンニバルに関する知識を持っていることが前提で書かれている気がするんですよねえ。あとがきを見ると、「一般の読者を対象とした」とあるんですが、明らかに説明が足りないんですよ。
一つの出来事が別の出来事を生むのが歴史ですが、その経過が歴史の面白味なわけです。なんでこうなったの?っていうね。
この経過をほとんど書いていない。学者という立場からすると、経過などは所詮、推測の域をでないものだから、事実を求める我々には必要のないものだ、ということになるのかもしれませんが、別に私は歴史を学習するために歴史を読むのわけではなく、単に面白いから読むのですよ。
極論を言えば、一人の人物の生まれてから死ぬまでの一生を、歴史的事実を整然と並べたものより、エピソードに終始している読み物の方が愉しいわけです。
いわば、勝手に想像していることが愉しいというわけです。
例えば、バスティーユ監獄占拠って事件、世界史でお勉強しましたね?
あんとき、ルイ16世は、その日の日記で、「本日は何もなかった」と書いているらしいんです。ルイ16世っては、有名なマリーアントワネットの旦那ですな。後にギロチンで処刑されてしまった人です。
これを見て学者さんはいうわけです。こいつは政治に何の関心もなかった。やっぱり糞野郎だ。とね。
しかし、私はそうは思わないのです。ただの個人的な解釈ですが、「本日やばいことがあった」と書くこと、つまり、当たり前のことを書くのが嫌だったのではないか。そして、この日記を見た後世の人に、「やつはやっぱりびびってたんだ」と思われるのが嫌だったんではないか。みんなが予想しているようなことを書いてやるもんか、という反骨がそこにあったのではないか。
そう思いたいのです。こういうくだらんことにこだわる事こそ、漢道なのです。
そう思える余地があるからこそ、こういうエピソードに私は惹かれるわけです。
第二次ポエニ戦争が終わるまで、この「分かる人だけついてきて」って姿勢が顕著です。
カンネ(カンナエ)の戦い。この、有史以来ほとんど初にして最も完璧な包囲戦と言われたこの戦いしか、図が載っていないのです。
他の戦いは図がない上に、文章も端折って書いているため、いまいちどんな風に流れたのか分からないのです。
ほかにも、地中海全域の地図が巻頭にあるくらいで、戦術的に行動していることを分からせてくれる拡大図がないのです。様々な地名が出てきますが、位置関係が分からないまま、話が進んでいってしまいます。
読み終わったあとなら理解できます。著者は、ポエニ戦争について書きたかったのではなく、ポエニ戦争によって稀代の将軍という像が定着してしまったが、実はハンニバルは外交的、税制的、内政的にも、つまり総合すると、政治家としても傑出した人物であったということを書きたかったわけです。むしろ、将軍ではなく、政治家であったと、著者は言いたかったのでしょう。
だからこそ、書きたいことではないが、そのハンニバルを書く上で省略できないポエニ戦争についてはすっ飛ばしていったのでしょう。
ポエニ戦争後、カルタゴを立て直した政治家という面に重点を置いていたのでしょう。その部分は、面白かったです。
実際、後半部分は面白かったです。これがあるから6点です。なければ4点です。
この本の参考文献とか欄にあった「ポエニ戦争」って本。外国の学者が書いた論文調の本ですが、これ、前に読んだことがあるんですよ。
ハンニバルに特化するのではなく、第一次、第二次、第三次ポエニ戦争を細かく書いているわけです。
あちこちで良書と言われてますが、私はそうだとは思えません。
何より分かり辛いのです。
元の文章が悪いのか、訳者が悪いのか知りませんが、文章ごとの繋がりがよく分からないことが多いです。正直、ぶった切られていると言ってもいいと思います。
歴史の流れはきちんと書かれているし、冷静な叙述という意味では、とての優れた内容ですが、面白みという意味では、データの羅列に萌え萌えできる学者さん以外には厳しいでしょう。
あまりにも文章が下手ですから。
それに比べれば、こっちはマシですが、やはり所詮は学者ということでしょうか。
そろそろ、学者も気付いていい頃だと思います。文章は、物書きに任せた方がいいと。共著という形にして、物書きに書いてもらっては如何ですか?
ま、この本、30年くらい前に出版されたものなんですけどね。
悪口ばかりですが、内容的には悪くありません。まったく知らなくても流れはつかめるし、ある程度知識があれば、面白く感じられるでしょう。
特に、後半部分は、私も面白かったですし。
でも、血は滾らなかったので、そこそこという評価に落ち着きました。
余談ですが、上の画像。数あるハンニバル像の中で、どうしても、これがよかった。
この顔が好きなのです。哀しげでいながら、決然とした顔つき。甘さが微塵も見られない。
いい顔です。
もう少し大きく、画質がいいのが欲しかったのですが、ありませんでした。
実際には、これが本当にハンニバル像か怪しいという説もありますが、関係ないです。2000年以上昔の人ですからね。
肝心なのは、この顔がハンニバルに相応しく、私は、この顔を見ながらハンニバルに思いをはせてきたってことです。
でも、この画像。グーグルでもグーでも中々見つからず、アンソニー・ホプキンスばかりでてくる。
仕方なく海外のサイトで検索したら、サクッとでてきた。
なんだ、アメリカ人より馬鹿か、日本人は。
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