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映画「トロイ」

点数:3点
寸評:下世話にしすぎ。

さて、プラピ主演で話題になったトロイ。この間、テレビでやってましたね。
私も見ました。

ハッキリいって、クソ映画ですね。ビックリしました。
ハリウッドでは失笑を買ったという噂ですが、そりゃそうです。

原作にホメロスと書いてありますが、止めてくれと。
ホメロスのイーリアスは、読んでみると分かりますが、荘厳な叙事詩なんですよ。
本当ならば、これは詩というだけでなく唄なんだそうです。

ギリシャ語で韻を踏み、それをリズムに乗せて詩吟してこそ、その真の素晴らしさが分かるもののようです。
が、日本人の私には、残念ながらギリシャ語は分かりませんし、これを謡っているところなぞお目にかかれる筈もありません。

が、本を読んでみれば、なんとなくは分かりますよ。
その美しさが。

その2000年以上もの間、地中海文学、ひいてはヨーロッパ文学の最高峰と謳われたものを、低俗なヒーローアクションものにしてしまった監督は最低です。

アキレス。あんなキャラではないです。一匹狼でハードボイルドな描かれ方はされていません。
頭の悪い人間にアピールしやすい、低レベルな描き方を映画がしただけです。

砂浜に50人で乗り込んで制圧したところなぞ、子供なら面白がるでしょうが、ただの馬鹿ですね。
そんなことをする必要もないですし、無駄に人死にがでるだけです。
名将なら、絶対にしないことです。

大体、宣戦布告もなしに、いきなり斬り合いになるわけがないのです。
唐突過ぎます。

大体、トロイ戦役は10年以上も続いた、一大戦役だったわけです。
それを、映画のなかではほんの数日で終わってしまったような描き方をしていますね。
馬鹿丸出しです。

原作のイーリアスは、10年にも及ぶ戦いの最後の数週間を描いているに過ぎません。
さらに、イーリアスには木馬の計は描かれていません。アキレスがヘクトールを殺すところまでです。
映画ではトロイの滅亡まで書かれていますから、おそらくホメロスのオデュッセイアをも包括していることになるでしょう。
が、オデッセイアは、オデッセウスが地中海を渡り、自国に帰っていくときの試練を描いたもので、トロイ戦役には直接関係ありません。

なので、トロイ戦役全体を描きたいのであれば、原作にホメロスなどとクレジットできないはずなのです。
原作:ホメロスなんてのは、只の映画の箔付けに過ぎないでしょう。
原作を知っている人間からすると、なめるな!!の一言で終わりです。

アガメムノーン王がクソ爺みたく描かれていますが、これも間違いです。
そんなにクソ野郎ではありません。少々ケチではあるようですが。

アキレスとアガメムノーンとの確執も、映画の様にハードボイルドな原因ではありません。
アポロン神殿の美しい巫女を奪い合ったのは事実ですが、アキレスが奴隷として欲しかったその女を、アガメムノーンが与えてくれなかったから、いじけただけのことです。

パリスとヘレネーにしても、愛があったように書かれていますが、原作ではそういった書かれ方はされていません。
たんにパリスが奪っていったのです。メネラーオスの留守の間に。
最低な男です。

メネラーオスですが、映画のなかでヘクトールに殺されましたが、原作のなかでは殺されていません。あんなにクソ野郎でもありません。
ちゃんとした勇士です。

そういえば、映画でアイアースもヘクトールに殺されましたが、これもまた死んではいません。アイアースにしても2人登場していて、どっちがどっちだか分からなくなるんですけどね、原作は。

パトロクロスが殺されたことによって、アキレスが出陣したのは原作も映画も同じです。
んで、最後にアキレスは巫女を与えられ、それだけじゃ満足できないと、アガメムノーンが持っているヘパイトスが鍛えた鎧も要求し、それをまとって戦闘に出ます。
アキレス鬼神の働きを見せヘクトールを追い詰め、これを殺し、無残な仕打ちをします。
この辺は映画でも書かれていますね。馬車(当時の戦車)で死体を引きずっていくと。

大体、このあたりで読者はアキレスが嫌いになります。
ヘクトールの方がよっぽどまともな人間です。アキレスは自意識過剰かつ残酷な男です。

イーリアスの素晴らしいのははそういうところです。
三国志でもそうですが、美しい志を持っているからといって、優れた人間だからといって勝つとは限らない。無情なのが世の常。
そういったことをしっかりと描いているのです。
馬鹿なアメリカ人が大好きな、善悪二元論の勧善懲悪ではないのです。

それを、まさに低俗な二元論的映画にしてしまったのが、トロイです。
クソです。どうしようもない映画です。

原作どうこう言う以前に、この映画は内容がまったくありませんし。ただ暴れて殺しているだけ。馬鹿馬鹿しい。
どうしようもないです。
こんな内容なら、わざわざ歴史的叙事詩でやらなくても、アクション映画でやればいいではないですか。
その方が、よっぽど素直に楽しめます。

いいところは、映像が美しく、音楽も中々雰囲気が出ていることくらいでしょうか?
なので、3点は上げます。

面白かったのは、トロイの描き方です。
国民は小アジア系民族、すなわち髪が黒く浅黒い肌の人種として描かれています。
が、王族はみんな白人です。このあたり、自由の国アメリカの本性が出ていて面白いですね!!

この映画をみて、誰もイーリアスに興味を持たないでしょうなあ。
イーリアスを知っている人からすると、唾棄すべきクソ映画になるでしょう。
どっちにしろ、無価値な映画です。こんな映画を作るのに何億も金を使うのなら、私に模型を勝ってくれといいたいです。

原作とはまったく違うので、この映画を見てイーリアスも駄目だなんて思わないで下さいね。
イーリアスは美しい叙事詩ですから。

今現在、松平千秋さんの翻訳版「イリアス」と、呉茂一さんの「イーリアス」。両方が楽しめます。
松平さんのが出た後、呉さんのは絶版になったんですけどね。最近復刻したのです。
私は呉さんの方が好きです。詩情が出ていますから。
松平さんのは読み易いです。呉さんのは原作に忠実にってことで読みにくいんですね。
内容を楽しむって意味では、松平さんの方が向いています。

なので、松平さんのをお勧めします。図書館に行けば必ずあります。読んでみて下さい。

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