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癇癪持ち 降・臨!!



今日のスピットファイアMK9のお時間です。

ようやく完成しました。スピット9。
年をとったからでしょうか?不思議と完成を急ぐ気持ちが薄らぎ、以前よりもゆったりとした気持ちで作業ができました。
お陰で、ブランクがあった割には自分の想定と現実の乖離にイラつくこともなく、すんなりと作れてしまいました。

作業は丸ひと月。
途中、いくつかの不運が重なり予定がずれることもありましたが、それでも精々数日程度の遅れでしょう。
本当はもっと手早く作りたいのですが(積みキットの山のプレッシャーで)、ひと月に一個完成させるとしても30年以上かかる在庫を見ると、もはや急ぐことに意味があるようにも思えなくなるわけです。

これが、いわゆる解脱の境地です(違います)。

スピットファイア。
私にとって、最も好きなレシプロ機なわけで、思い入れを語りだせばキリがないのですが、そこまで実機に詳しいわけでもなく、要するにこの造形、デザインが好きな理由なのです。

ミッチェル大先生が設計したこの機体。
美しい楕円翼。
力強いカウル。
繊細な胴体。
イカしますねえ。

ちょっとばかし薀蓄を垂れると、第二次世界大戦が始まった当初から主力をつとめ、終戦までその座が動かなかった機体という実に稀有な機体です。
航空兵器の進化が凄まじかった時代において、開戦から終戦まで実に5年間もの間最強クラスの戦闘力を持ち続けたのは、スピットとBf109くらいのものです。
・・・多分。

これはつまり、ミッチェル大先生の設計がいかに優れていたかという証明なのでしょう。
Bf109がF型からなかなか戦闘力を上げられずに四苦八苦している時でも、着実に性能を上げ続け、プロペラは2枚から5枚もしくは3枚の二重反転プロペラまで進化してしまった機体です。
エンジンの出力にしてもMk.Iでは1030馬力しかなかったのに、最終的には2300馬力ほどにまで上がってしまいました。
この美しい機体のどこに、そんな堅牢さがあったんでしょうね。

Bf109E型がドーバー海峡を渡ってきて始まったのがバトルオブブリテン。
これに対してイギリス空軍で唯一対抗できたのがスピットファイアMK.I。
楽勝のつもりだったドイツが驚いて開発したのがBf109F型。こいつは当時世界最強の戦闘機でした。
F型が配備されビビったRAFが開発プランを繰越しして新型エンジンを無理矢理積んだ急造の機体がスピットファイアMK.V。
F型に対して劣勢だったMK1と2でしたが、MK5のお陰で、漸く互角となりました。
ところが、そこでルフトバッフェが新型を出してきました。それがFw190A。
こいつの登場がそうとう強烈だったらしく、一気にRFAは窮地に立たされます。
ゆっくりとスピットを設計し直している暇などなく、MK5に新型のエンジンを無理矢理載せて新型スピットを急造します。
これが、MK9。

流れを追うと、大体こんな感じですね。
こうして見ると、スピットファイアという機体の進化は、イコールでエンジンの進化にあったと思うわけです。
新型の、より強力なエンジンの進化こそが、スピットの進化だと。

しかし、同時にどんどん出力は向上し、果ては低高度用、高高度用。どちらのエンジンを積んでもいかんなく発揮するスピットという機体があればこそでもあります。
一撃離脱の高速戦闘に特化したBf109とも互角の速度性能を持ち、その上で旋回性能に至っては完全に凌駕していたわけです。
Bf109に唯一劣っていた急降下性能もMK.9において漸く互角とし、高高度性能では完全に引き離してしまいました。

MK.9以降もスピットの進化はとまりませんでしたが、MK9が登場してからドイツの航空機がスピットに性能的に優位に立つことはありませんでした。
ほとんど全てにおいてルフトバッフェの戦闘機に対して勝てる性能を持っていたのがMK9なわけで、事実上トドメをさしたのもMK9でした。
型番が24まで続くスピットの中で実質的に決定版とも言えるわけです。

もっとも戦闘機の性能だけで戦争に勝てるわけはなく、ドイツの戦略的誤りが沢山あったことの方が大きな理由でしょう。
MK9が主力となりうる配備数に達する頃には、既にドイツは劣勢に立たされていたわけですからね。

さて、無駄な薀蓄が長くなりました。
あとはざっと写真を載せていきます。
















そうそう。今回、撮影にあたって、新しデジカメを買いました。
金もないのに何やってるんだと自分でも思いますが、スマホのカメラの性能があまりにも悪すぎて、ウンザリしてしまったんですよ。
んで、ついでにある程度まともに写真が撮れるようにと、100均で背景となる紙を買ってきて撮ってみました。
撮影ブースがあるわけでもなくそんなにいい写真にはなりませんが、まあ以前よりはマシでしょう。
それでも、ウォッシングやドラブラシの成果は、写真だとほとんどわかりませんねえ。

今回の製作のテーマは、ゆっくりと丁寧にやるということでした。
3年近いブランク明けですし、忘れていることもあるからです。
たいして上手にできないだろうなあと思っていたのですが、意外や意外。かなり私個人の満足度は高い完成度となりました。

グレーの色合いも理想どおりできたし、デカールもシルバリングせずに貼れました。
ウェザリングもナマで見るといい感じですし、塗膜も綺麗です。
やはり、模型製作は基本が大事ですな。

さて、キット評です。

ハセガワ 1/48 スピットファイアMK.IX

実にいいキットです。
作りやすく、パーツ精度も高く、おまけに格好いい。
作り始めて気がつきましたが、タミヤのMK.5よりもモールドの質感が高いです。
タミヤのモールドはパネルヒンジっていうのかな?丁番みたいな奴、あれの再現がないのですが、ハセガワのキットはちゃんとしてます。
つまり、立体的。
これはいいですよ。
1996年発売だったと思うので、ほとんど20年前のキットですが、なかなかどうして、素晴らしいキットですよ。

欠点は、製作記の方にも書いてますが、過給器吸入口のパーツが合わないことと、デカールが固くて凹凸になじまないこと、それかたリベットが浅いことくらいですね。
パーツは地道に摺り合わせするしかないですね。
リベットが浅いと墨入れの拭き取りで墨が残りづらくなってしまいます。先端の硬い模型製作用の綿棒を使うといいでしょう。

組み立て易さという点からは言いたいことは沢山あります。
主脚やタイヤの組立てのとき、ピンとダボのクリアランスを取りすぎてグラグラでクルクルなわけです。
リスク・リターンを考えると全体をハメ込み式にする必要はないと思いますが、主脚やタイヤ、尾輪くらいはハメ込み式にしてくれた方が、作り手は凄くありがたい。
グラグラすぎて角度が決まらないし、決めたつもりでも、硬化待ちをしている最中にゆっくりと垂れてきてしまって、角度が変わったりするんですよね。

ただまあ、この辺りのことは20年前のキットということで、仕方ないことにします。
バンダイの実績を考えると、決して仕方なくはないんですけど。

あとは、塗装指定のカラーが、何年も前から絶版になっているクレオスのRAFカラーセットの間まであること。
既にそんな名前の色はないし、知らない人は混乱するだけなのです。

ハセガワさん。
ちゃんとユーザーの方を向いた商品にしてくださいね。

総評としては、素晴らしいキットです。
デキは最高レベルですね。個人的には1993年製のタミヤ版よりもいいと思います。
ただ、2013年に出たエデュアルドの1/48スピットMK9のデキが超絶的なので、現在的感覚からすると劣ります。
値段もエデュアルドのウィークエンドエディションと同じくらいですしね。
とはいえ、エデュアルド版はまだ作っていないので、パーツ精度はわかりません。ディテールは凄まじいですけどね。

ちなみに、先日発売されたばかりのエデュアルドの48スピットMK8も凄いデキです。
このキットを見て初めて、私はMK8と9ではパネルラインが違うのだと知りました。
キットが合っていればですが。
そして、ハセガワのMK9は、エデュアルドを基準にすると、MK8に近いパネルラインとなっております。

あー、はやくエデュアルド版も作りたいぜ~!!




3年前に作ったハセガワ 1/72 スピットファイアMK8と。
こうして見ると、やはり今回の方がデキがいいです。技術的にはなにも進歩していないはずなのに。
まあ、72を作った時は8日間で完成させるとかいう無茶なことしてましたしね。


そんなわけで、今日のスピットファイアMK9はお仕舞い。

暫くは模型休暇を撮りつつ、次のハーディガンの作戦を練ります。

では。




新しいデジカメにあった変な演出。
在りし日のスピットという感じですな。

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