その女の子が信じてくれたなら、ドロボウは空を飛ぶことだって、湖の水を飲み干すことだってできるのに
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以下の文章は、模型に復帰したばかり(というかほとんど始めたばかりの初心者)の人が考えたことだと思ってお読みください。
というのも、私が小学生依頼ご無沙汰だった模型に復帰した頃のお話ですから。
事の起こりは、2006年12月初頭、新宿ヨドバシに行った時でした。
私はそこでキット改造用の工具の買出しをしていました。
で、工具を必要なだけ物色した後、当然キットの在庫確認をします。
意外と少ないな・・・
これが個人的な感想でした。
近所のトイザラスはあれの倍はありましたし。(最近は在庫一掃が進んだのか、かなり減りましたが。半額セールでもやったの?不良在庫化していたしねえ・・・)
少ないのはキャラクターモデルでして、スケールモデルは昨今の基準で考えれば多いほうだと思います。
普通の玩具屋に比べての話ですが。
ともかく物色します。
「やっぱりどこも大体品揃えは同じだよねえ。つまらんなあ。もっと面白いキットはないものか?」
面白いキットって凄く主観的な物言いですが、超簡単に言えば、「ガンダム以外のロボットのキット」ってことです。
復帰から三ヶ月にして、既にガンプラに飽き始めていたのかも知れません。
面白みのあるコトブキヤのプラキットなんて、ガンプラの1/10もありませんでしたしね。
そう思って、ガンプラの棚から後ろを振り返った瞬間。私にストライクなデザインを発見しまいました。
「うお!何これ。滅茶格好ええ」
そこにおいてあったキットこそが、WAVEさんが出している1/144・レッドミラージュver.3のキットでした。
運命の出会いでした。ここから私の、地獄のような模型への出費が始まったのだと思っています。
最初にレッドミラージュを見たときの印象は、「メカと金属生命体の中間みたいなデザインで、なんとなく禍々しいところが格好いいな」でした。
ガンダムや、ガンダムにどこか似ているデザインのメカキットとは一線を画すオリジナリティと高い完成度。
一目惚れでした。
並んでレッドのバリエーション、ナイトオブゴールド、ジュノーン、バッシュ・ザ・ブラックナイトなど、WAVEさんの出しているインジェクションプラキットが一揃い並んでおりました。
当然、一通り手に取り、箱に載っている完成写真を研究します。
結果、レッドミラージュかジュノーンが私の心を捉えました。
やっぱり普遍的に格好いいデザインってあるんだと思いますね。
レッドもジュノーン系のデザインも、両方とも人気の高いものです。
最初の比較検討で、私もどちらかにしようと思ったわけですからね。
もう、この時点で私は衝動買いする気満々だったわけです。
レッドとジュノーンを見比べます。
「レッドの方がちょっと格好いい気もするが、ジュノーンも捨てがたい。大きさ的にはレッドが1/144でジュノーンが1/100か。それでいてレッドの方が4000円。ジュノーンは3300円。どういうことだ?」
ガンプラの値段基準しか知らなかった当時の私にはよく分からない値段設定でした。
色々と悩んだ末、レッドミラージュを買うことにしました。(あのジュノーンを買わなくて良かったと思う。恐ろしいキットですからね)
箱の写真を見るだに、レッドの方が精巧に造られているという印象があったからです。
ヨドバシホビー館ではキットの箱を開けることができないよう、テープを貼ってあります。
盗む馬鹿がいるから、正直者まで損をする。
中身の確認を家まで持ち越し、私は帰路に着きました。
最近のプラキットだし、当然イロプラで、パーツ分けもしっかりしていて、概ねちょっと前のMGクラスの作り易さなんだろうと信じて・・・。
帰宅後、早速箱を開けて、さっきまで名前すら知らなかったメカのキットを精査します。
ビックリ!!
パーツが半透明!!
なんじゃこりゃ?実際には半透明というより微妙に透けている乳白色という感じでしたが、それでも驚きました。
何かの限定品か?そう思ってしまいました。ガンプラでも、意味不明にスケルトンのキットってありますよね。アレを連想したのです。
さらに、一応、プラに成型色はついているのですが、ガンプラと比べて色が少ない。
素組みだけで見栄えのする物にはなりそうもありません。
「おやおや、最近のキットなのになあ・・・」
当時の私は復帰したばかりですから、復帰してから作った事のあるMGガンプラを基準に考えていて、最近のキットはほとんどすべて塗装がそれほど必要ないものだとばかり思っていました。
まあ、それでも完成写真と比べると、大体の色分けはできていることが判明しました。
そして、説明書を熟読します。
おいおい、すべて接着かよ!!(合わせ目消しすら、知ったばかりの頃です。大目に見て)
これも驚きです。はめ込み式プラキットが主流になってからはや20年近くの歳月が流れているわけです。
時代に逆行するかのような、オールパーツ接着式プラキット。
感動しました。
やはり復帰したばかりで物知らずだったから驚いたのですけどね。
今なら、接着式である理由は知っています。
プラキット特有のヒケをなるべく少なくするために、あえてスナップフィットを止めたのだそうです。
・・・漢です。
ガンプラのように、初めての人でも1日で作れるキットとはまったく別物です。
もっとビックリしたのは、デカールです。
最近ならシール、擦って転写するデカールがガンプラの主流です。
が、このキットは水転写デカール!!
なっつかしいなあ。水転写なんて、それこそ20年ぶりにくらいの再会でした。
なんて、なんて硬派なキットなんだ!!
激しく感動した私でした。
そう、そうなんだよ!こういう面白いキットを求めていたんだよ!!
こういう作り応えのあるキットを!!
勿論、今の私は知っています。
接着式のキットなんて、今だってザラにあるし(というか、主流)、はめ込み式と接着式は一長一短であることを。
そして、水転写デカールの方が、綺麗に貼ることができるならという付帯条件つきですが、ドライデカールよりも、シールなんて相手にならないくらいに、いい表現ができるってことも。
が、当時はこれに驚いたのです。無知でしたから。
未だにこういった
「作り手が頑張る必要のあるキット」
ってあるんだあ、って。
素直に、それに感動しました。
この感動は、いまだに私の心の中で音を発しています。
いい意味で作り応えがあり、それに見合う満足感を与えてくれるキット。
それが、レッドミラージュに出会って以降の、私が求めるキットとなりました。
模型制作の醍醐味に目覚めた瞬間でした。
さらにです。このキット。ガンプラなどでは絶対にお目にかかれないくらいの、複雑な面構成とモールドを持つキットでした。
個人的な推測ですが、ガンダムのデザインが袋小路に入って、ある意味つまらなくなっているのは(ほとんど変化がない)、プラモデル化を前提にデザインしているからだと思うんですよね。
まず始めにプラモデル化があり、その上にデザインを乗せているわけです。
なので、プラモにできない(できても再現のための時間や経費や労力などが嵩む)ものは、ハナから採用しないわけです。
約めて言えば、立体化が簡単なデザインのみが採用されていくわけですよ。
楽な仕事をしたいという、バンダイの都合です。
だから、最近のガンダムのデザインを見ても、一部を除いて、デザインの進化がなくて面白くないわけです。
そんなわけで私の場合、最近のガンダムのキットは買わず、昔のオリジナリティとが溢れ、完成度が高かった時代のデザインを買うことになるわけですね、ガンダムは。
後のデザインは、昔のデザインのマイナーチェンジに見えてしまいますから。
さて、レッドミラージュの複雑怪奇なデザイン。元のデザインが超複雑だったからというのは後々知ったわけですが、この秀逸な造型に心を打たれました。
表裏ですが、私が喜んだ要素、つまり整形色だけでほとんどのカラーリングを再現できない(つまり、全塗装必須)とか、接着やら水転写デカールやら複雑な造形が、そのままこのキットの弱点でもあるわけです。
最近の作るだけで綺麗なガンプラしか知らない世代にとっては特にアピールしづらい部分ですね。
つまり、かなり敷居が高いプラキットということになるわけですよ。
ただ組むだけなら小学生でもできるでしょう。説明書を熟読すると、パーツ分けが非常に親切だと分かります。
なるべく合わせ目が目立たないように設計してあるし、塗装の便も考えて、設定で色の違う場所はほとんど別パーツ化されていましたから。
しかしです。
綺麗に造ろうとなると、これほど大変なプラキットというのは、この頃は知りませんでした。
それこそ、MGなんぞよりも遥かに。
ただ組んで、綺麗に塗装するだけなのに。
私は、この硬派なキットを研究し始めました。
半透明を意識しているパーツのため、接着面が白くなってしまいます。これは上手く誤魔化せるのか?やってみなければ分かりませんが。
次に水転写デカールです。小さいものなら何とでもなるでしょうが、こいつのはかなりでかく、長細いのです。貼っている最中に思いっきりよじれること請け合いです。
ということは、塗装でデカール部分を再現した方がいいのではないか?
しかし、デカールは赤です。赤は筆塗りの時に、かなり塗りスジになりやすい色です。
困りました。(当時、私はエアブラシなど買うつもりはなかったのです)
次、接着というファクターです。
最近のガンプラと違い、すべてを接着する必要があるので、何にも考えずに組み立てていくと、後で塗るときに大変なことになります。
折角、塗りわけを意識してパーツ分けを元からしてくれているんですから、それを考慮した組み立て方を考えなくてはなりませんね。
約めて言えば、仮組みを慎重に行い、塗装を意識しながら計画的に工程を踏んでいかなければならないキットなわけです。
後は複雑な面構成とディテールです。
これがあるからこそ、このデザインは圧倒的に格好いいわけです。
なんとか面ごとのエッジを強調したいのですが、適当にヤスリをかけるとエッジが死んでしまいます。
ガンプラに比べたら5倍くらいは丁寧に、ペーパーがけをしてやる必要があります。
これは膨大なモールドにも同じことが言えますね。
なので、ちゃんと当て木をして丁寧に時間をかけてペーパーをかけなくてはならないのです。(当時の私はフリーハンドで適当にやっていた)
勿論、モールドを維持するために、ペーパーの前に彫りなおしておかなくてはなりません。
その労力たるや、ガンプラ旧キットの合わせ目消しの比ではありません。
この辺の造形や精密なモールドは、プラキットとしてはいまだに最高レベルにあると思います。
造り込みレベルは、現在ではコトブキヤさんのレイレナード・アリーヤに代表されるアーマードコア方が優れていますけれど(パーツ分けが半端ではなかったりね)、このレッドミラージュは1999年に発売されていたのです。(ver3は、金型流用で一部新規パーツを付けただけのバージョン違いで2006年発売)
当時、最大手のバンダイはMGではνやサザビーを出していた頃です。
アーマードコアのキットなど、影も形もなかった頃です。
WAVEさんの頑張りが良く分かります。
最後に、半透明装甲です。
これを上手く生かした綺麗な仕上げとはどうやればいいのだろうか?
パーツの端っこはなんとなく透けていますが、真ん中あたりはほとんど透けていません。透明度が非常に低いのです。
磨けばなんとか綺麗になるのだろうか?
仮に透明になった場合、透けて見える装甲の中はどう表現したらいいのだろうか?
いや、そもそも、フレームなどない箇所はどうすればいいのだろうか?
半透明な装甲部分は置いておくとしても、それ以外のフレームとなる部分や、シルバーの装甲部分は、塗装をしなくてはちょっと見栄えの悪い整形色です。
くすんだシルバーといった感じで、思いっきりプラスチックな色合いですから。
この色分けは、「組んだだけでハイクオリティ」を意識したガンプラの色分けとは違って、塗装する際にどこを塗ればいいのか分かり易くするための色分けだと、私は思っています。
つまり、全塗装が前提のキットなのです。
とてもじゃないですが、筆ではやってられないキットなわけです。
筆はどうしても厚塗りになってしまい、繊細なモールドなどは埋まってしまいますしね。
綺麗に作ろうとすると、これだけの膨大な労力と難題をクリアしていかなければならないわけです。
復帰してまだ2ヶ月。模型のことはガンプラの旧キットとMGしか知らない私でしたから(それも組むだけしかできない)、その当時の私にとっては驚異的なキットであったことは事実です。
それこそ、復帰してから作ってきた、組むだけで素敵なMGとは比べ物にならない、本格的な模型だったわけです。
模型の知識も、ほとんどありませんでしたしね。
求められる技術レベルと知識が、その時点の私では及びも付かない高次元にあるキットでした。
玩具ではなく模型。
そのストイックさと、再現された造形美。
この価値観に目覚めた瞬間でした。
結局、このキットは今の技術では綺麗に作ることはできないと考え、積みに廻しました。
ですが、レッドミラージュで受けた造形美や硬派な模型の魅力。それら、衝撃的な印象は色褪せることなく、その後何度もネットで調査し、研究することとなったのでした。
その結果知った新しい世界。模型の深みを垣間見た時の興奮・・・。
確かにWAVEさんが出しているレッドミラージュは、バンダイ製に比べれば手のかかるキットです。
が、それ以上に、バンダイ製キットよりも優れた箇所が多く見られます。
そこで、当然こんな疑問が沸いてきます。
手のかかる模型ということが、すなわち駄目な模型という判断の根拠になるのだろうか?
その疑問は長く尾を引いて、私の心に残った・・・
というのも、私が小学生依頼ご無沙汰だった模型に復帰した頃のお話ですから。
事の起こりは、2006年12月初頭、新宿ヨドバシに行った時でした。
私はそこでキット改造用の工具の買出しをしていました。
で、工具を必要なだけ物色した後、当然キットの在庫確認をします。
意外と少ないな・・・
これが個人的な感想でした。
近所のトイザラスはあれの倍はありましたし。(最近は在庫一掃が進んだのか、かなり減りましたが。半額セールでもやったの?不良在庫化していたしねえ・・・)
少ないのはキャラクターモデルでして、スケールモデルは昨今の基準で考えれば多いほうだと思います。
普通の玩具屋に比べての話ですが。
ともかく物色します。
「やっぱりどこも大体品揃えは同じだよねえ。つまらんなあ。もっと面白いキットはないものか?」
面白いキットって凄く主観的な物言いですが、超簡単に言えば、「ガンダム以外のロボットのキット」ってことです。
復帰から三ヶ月にして、既にガンプラに飽き始めていたのかも知れません。
面白みのあるコトブキヤのプラキットなんて、ガンプラの1/10もありませんでしたしね。
そう思って、ガンプラの棚から後ろを振り返った瞬間。私にストライクなデザインを発見しまいました。
「うお!何これ。滅茶格好ええ」
そこにおいてあったキットこそが、WAVEさんが出している1/144・レッドミラージュver.3のキットでした。
運命の出会いでした。ここから私の、地獄のような模型への出費が始まったのだと思っています。
最初にレッドミラージュを見たときの印象は、「メカと金属生命体の中間みたいなデザインで、なんとなく禍々しいところが格好いいな」でした。
ガンダムや、ガンダムにどこか似ているデザインのメカキットとは一線を画すオリジナリティと高い完成度。
一目惚れでした。
並んでレッドのバリエーション、ナイトオブゴールド、ジュノーン、バッシュ・ザ・ブラックナイトなど、WAVEさんの出しているインジェクションプラキットが一揃い並んでおりました。
当然、一通り手に取り、箱に載っている完成写真を研究します。
結果、レッドミラージュかジュノーンが私の心を捉えました。
やっぱり普遍的に格好いいデザインってあるんだと思いますね。
レッドもジュノーン系のデザインも、両方とも人気の高いものです。
最初の比較検討で、私もどちらかにしようと思ったわけですからね。
もう、この時点で私は衝動買いする気満々だったわけです。
レッドとジュノーンを見比べます。
「レッドの方がちょっと格好いい気もするが、ジュノーンも捨てがたい。大きさ的にはレッドが1/144でジュノーンが1/100か。それでいてレッドの方が4000円。ジュノーンは3300円。どういうことだ?」
ガンプラの値段基準しか知らなかった当時の私にはよく分からない値段設定でした。
色々と悩んだ末、レッドミラージュを買うことにしました。(あのジュノーンを買わなくて良かったと思う。恐ろしいキットですからね)
箱の写真を見るだに、レッドの方が精巧に造られているという印象があったからです。
ヨドバシホビー館ではキットの箱を開けることができないよう、テープを貼ってあります。
盗む馬鹿がいるから、正直者まで損をする。
中身の確認を家まで持ち越し、私は帰路に着きました。
最近のプラキットだし、当然イロプラで、パーツ分けもしっかりしていて、概ねちょっと前のMGクラスの作り易さなんだろうと信じて・・・。
帰宅後、早速箱を開けて、さっきまで名前すら知らなかったメカのキットを精査します。
ビックリ!!
パーツが半透明!!
なんじゃこりゃ?実際には半透明というより微妙に透けている乳白色という感じでしたが、それでも驚きました。
何かの限定品か?そう思ってしまいました。ガンプラでも、意味不明にスケルトンのキットってありますよね。アレを連想したのです。
さらに、一応、プラに成型色はついているのですが、ガンプラと比べて色が少ない。
素組みだけで見栄えのする物にはなりそうもありません。
「おやおや、最近のキットなのになあ・・・」
当時の私は復帰したばかりですから、復帰してから作った事のあるMGガンプラを基準に考えていて、最近のキットはほとんどすべて塗装がそれほど必要ないものだとばかり思っていました。
まあ、それでも完成写真と比べると、大体の色分けはできていることが判明しました。
そして、説明書を熟読します。
おいおい、すべて接着かよ!!(合わせ目消しすら、知ったばかりの頃です。大目に見て)
これも驚きです。はめ込み式プラキットが主流になってからはや20年近くの歳月が流れているわけです。
時代に逆行するかのような、オールパーツ接着式プラキット。
感動しました。
やはり復帰したばかりで物知らずだったから驚いたのですけどね。
今なら、接着式である理由は知っています。
プラキット特有のヒケをなるべく少なくするために、あえてスナップフィットを止めたのだそうです。
・・・漢です。
ガンプラのように、初めての人でも1日で作れるキットとはまったく別物です。
もっとビックリしたのは、デカールです。
最近ならシール、擦って転写するデカールがガンプラの主流です。
が、このキットは水転写デカール!!
なっつかしいなあ。水転写なんて、それこそ20年ぶりにくらいの再会でした。
なんて、なんて硬派なキットなんだ!!
激しく感動した私でした。
そう、そうなんだよ!こういう面白いキットを求めていたんだよ!!
こういう作り応えのあるキットを!!
勿論、今の私は知っています。
接着式のキットなんて、今だってザラにあるし(というか、主流)、はめ込み式と接着式は一長一短であることを。
そして、水転写デカールの方が、綺麗に貼ることができるならという付帯条件つきですが、ドライデカールよりも、シールなんて相手にならないくらいに、いい表現ができるってことも。
が、当時はこれに驚いたのです。無知でしたから。
未だにこういった
「作り手が頑張る必要のあるキット」
ってあるんだあ、って。
素直に、それに感動しました。
この感動は、いまだに私の心の中で音を発しています。
いい意味で作り応えがあり、それに見合う満足感を与えてくれるキット。
それが、レッドミラージュに出会って以降の、私が求めるキットとなりました。
模型制作の醍醐味に目覚めた瞬間でした。
さらにです。このキット。ガンプラなどでは絶対にお目にかかれないくらいの、複雑な面構成とモールドを持つキットでした。
個人的な推測ですが、ガンダムのデザインが袋小路に入って、ある意味つまらなくなっているのは(ほとんど変化がない)、プラモデル化を前提にデザインしているからだと思うんですよね。
まず始めにプラモデル化があり、その上にデザインを乗せているわけです。
なので、プラモにできない(できても再現のための時間や経費や労力などが嵩む)ものは、ハナから採用しないわけです。
約めて言えば、立体化が簡単なデザインのみが採用されていくわけですよ。
楽な仕事をしたいという、バンダイの都合です。
だから、最近のガンダムのデザインを見ても、一部を除いて、デザインの進化がなくて面白くないわけです。
そんなわけで私の場合、最近のガンダムのキットは買わず、昔のオリジナリティとが溢れ、完成度が高かった時代のデザインを買うことになるわけですね、ガンダムは。
後のデザインは、昔のデザインのマイナーチェンジに見えてしまいますから。
さて、レッドミラージュの複雑怪奇なデザイン。元のデザインが超複雑だったからというのは後々知ったわけですが、この秀逸な造型に心を打たれました。
表裏ですが、私が喜んだ要素、つまり整形色だけでほとんどのカラーリングを再現できない(つまり、全塗装必須)とか、接着やら水転写デカールやら複雑な造形が、そのままこのキットの弱点でもあるわけです。
最近の作るだけで綺麗なガンプラしか知らない世代にとっては特にアピールしづらい部分ですね。
つまり、かなり敷居が高いプラキットということになるわけですよ。
ただ組むだけなら小学生でもできるでしょう。説明書を熟読すると、パーツ分けが非常に親切だと分かります。
なるべく合わせ目が目立たないように設計してあるし、塗装の便も考えて、設定で色の違う場所はほとんど別パーツ化されていましたから。
しかしです。
綺麗に造ろうとなると、これほど大変なプラキットというのは、この頃は知りませんでした。
それこそ、MGなんぞよりも遥かに。
ただ組んで、綺麗に塗装するだけなのに。
私は、この硬派なキットを研究し始めました。
半透明を意識しているパーツのため、接着面が白くなってしまいます。これは上手く誤魔化せるのか?やってみなければ分かりませんが。
次に水転写デカールです。小さいものなら何とでもなるでしょうが、こいつのはかなりでかく、長細いのです。貼っている最中に思いっきりよじれること請け合いです。
ということは、塗装でデカール部分を再現した方がいいのではないか?
しかし、デカールは赤です。赤は筆塗りの時に、かなり塗りスジになりやすい色です。
困りました。(当時、私はエアブラシなど買うつもりはなかったのです)
次、接着というファクターです。
最近のガンプラと違い、すべてを接着する必要があるので、何にも考えずに組み立てていくと、後で塗るときに大変なことになります。
折角、塗りわけを意識してパーツ分けを元からしてくれているんですから、それを考慮した組み立て方を考えなくてはなりませんね。
約めて言えば、仮組みを慎重に行い、塗装を意識しながら計画的に工程を踏んでいかなければならないキットなわけです。
後は複雑な面構成とディテールです。
これがあるからこそ、このデザインは圧倒的に格好いいわけです。
なんとか面ごとのエッジを強調したいのですが、適当にヤスリをかけるとエッジが死んでしまいます。
ガンプラに比べたら5倍くらいは丁寧に、ペーパーがけをしてやる必要があります。
これは膨大なモールドにも同じことが言えますね。
なので、ちゃんと当て木をして丁寧に時間をかけてペーパーをかけなくてはならないのです。(当時の私はフリーハンドで適当にやっていた)
勿論、モールドを維持するために、ペーパーの前に彫りなおしておかなくてはなりません。
その労力たるや、ガンプラ旧キットの合わせ目消しの比ではありません。
この辺の造形や精密なモールドは、プラキットとしてはいまだに最高レベルにあると思います。
造り込みレベルは、現在ではコトブキヤさんのレイレナード・アリーヤに代表されるアーマードコア方が優れていますけれど(パーツ分けが半端ではなかったりね)、このレッドミラージュは1999年に発売されていたのです。(ver3は、金型流用で一部新規パーツを付けただけのバージョン違いで2006年発売)
当時、最大手のバンダイはMGではνやサザビーを出していた頃です。
アーマードコアのキットなど、影も形もなかった頃です。
WAVEさんの頑張りが良く分かります。
最後に、半透明装甲です。
これを上手く生かした綺麗な仕上げとはどうやればいいのだろうか?
パーツの端っこはなんとなく透けていますが、真ん中あたりはほとんど透けていません。透明度が非常に低いのです。
磨けばなんとか綺麗になるのだろうか?
仮に透明になった場合、透けて見える装甲の中はどう表現したらいいのだろうか?
いや、そもそも、フレームなどない箇所はどうすればいいのだろうか?
半透明な装甲部分は置いておくとしても、それ以外のフレームとなる部分や、シルバーの装甲部分は、塗装をしなくてはちょっと見栄えの悪い整形色です。
くすんだシルバーといった感じで、思いっきりプラスチックな色合いですから。
この色分けは、「組んだだけでハイクオリティ」を意識したガンプラの色分けとは違って、塗装する際にどこを塗ればいいのか分かり易くするための色分けだと、私は思っています。
つまり、全塗装が前提のキットなのです。
とてもじゃないですが、筆ではやってられないキットなわけです。
筆はどうしても厚塗りになってしまい、繊細なモールドなどは埋まってしまいますしね。
綺麗に作ろうとすると、これだけの膨大な労力と難題をクリアしていかなければならないわけです。
復帰してまだ2ヶ月。模型のことはガンプラの旧キットとMGしか知らない私でしたから(それも組むだけしかできない)、その当時の私にとっては驚異的なキットであったことは事実です。
それこそ、復帰してから作ってきた、組むだけで素敵なMGとは比べ物にならない、本格的な模型だったわけです。
模型の知識も、ほとんどありませんでしたしね。
求められる技術レベルと知識が、その時点の私では及びも付かない高次元にあるキットでした。
玩具ではなく模型。
そのストイックさと、再現された造形美。
この価値観に目覚めた瞬間でした。
結局、このキットは今の技術では綺麗に作ることはできないと考え、積みに廻しました。
ですが、レッドミラージュで受けた造形美や硬派な模型の魅力。それら、衝撃的な印象は色褪せることなく、その後何度もネットで調査し、研究することとなったのでした。
その結果知った新しい世界。模型の深みを垣間見た時の興奮・・・。
確かにWAVEさんが出しているレッドミラージュは、バンダイ製に比べれば手のかかるキットです。
が、それ以上に、バンダイ製キットよりも優れた箇所が多く見られます。
そこで、当然こんな疑問が沸いてきます。
手のかかる模型ということが、すなわち駄目な模型という判断の根拠になるのだろうか?
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